自民党幹事長の茂木敏充氏の派閥にもパー券不正疑惑。自民党のHPより

◆茂木派は何ら反省していない

政治団体「平成研究会」(以下、「茂木派」)が政治資金パーティの収入を政治資金収支報告書(以下、収支報告書)に記載していなかった問題で、2018年以降に事務総長を務めていた山口泰明元衆議院議員と新藤義明衆議院議員が12月29日に新たに刑事告発された。さらに、「茂木派」が収支報告書に加筆訂正した内容に関連し、新たに見つかった不記載分に対する追加の刑事告発も29日に東京地検に提出された。これで茂木派の明細不記載で刑事告発された合計額は918万円となった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆最新の22年分にも不記載が

29日付で東京地検に発送されたのは、「茂木派」のパーティ券収入不記載事件の告発補充書と追加告発状。茂木派に対する刑事告発は、2022年11月24日に出されてから今回まで、合わせて3回目となる。告発したのは上脇博之神戸学院大学教授。

2022年分の茂木派の収支報告書は2023年11月末に公表された。政治団体「栃木県建設協会政治連盟」の2022年分の収支報告書には、「平成研究会セミナー」に26万円を支出したと記載されていたが、茂木派の収支報告書には記載されていなかった。

茂木派は、「しんぶん赤旗日曜版」(以下、「赤旗」)が2022年11月6日号で不記載問題を報道した後になって収支報告書を訂正した。ところがその後に作成した収支報告書にも不記載があったことから、告発状では茂木派が「何ら反省していなかった」と厳しく批判している。

埼玉県選出の新藤義明衆議院議員もパーティ券不正疑惑で刑事告発された。
HPより。

◆指摘後に修正した分も告発対象に

政治団体「日本行政書士政治連盟」は、2020年10月30日に30万円分のパーティ券購入があったと収支報告書に記載しているが、茂木派の収支報告書には記載されていない。それを「赤旗」が報道で指摘した後になって、茂木派は収支報告書の訂正を行っていた。

過去2回の刑事告発では、代表である茂木敏充衆議院議員と会計責任者らが対象であったが、今回は2018年から2020年まで事務総長を務めていた山口泰明元衆議院議員(埼玉10区選出)と、2021年から事務総長を務めている新藤孝衆議院議員(埼玉2区選出)が茂木派の実務を取り仕切り、収支報告書の記載方針を決定する立場にあったとして追加で刑事告発の対象となった。山口元衆議院議員は21年10月をもって政界から引退しており、現在は選挙区の地盤は次男の山口晋氏が「後継」している。

◆マスメディアが報じないと特捜部は軽く見る

「赤旗」は、茂木派からパーティ券の購入金額を確認する連絡が政治団体に対してあったと2023年12月3日号で報道している。つまり法律で決められている20万円を超えるパーティ券収入の明細を茂木派が見落とすことはないはずだと、告発状は指摘している。派閥の長である茂木衆院議員、事務総長だった山口元衆議院議員、そして現在の事務総長である新藤衆院議員と会計責任者らが「共謀して故意に行った犯行としか考えられない」と厳しく批判している。

茂木派幹部を刑事告発した上脇博之神戸学院大学は次のように述べる。

「今、報道機関が注目して大きく報道しているのは、派閥の政治団体の裏金づくりです。それが重大な規正法違反であることは明らかですから、大きく報道する必要があることは言うまでもありません。

しかし、一方で20万円超のパーティ収入明細の不記載とその追加告発については、私は東京の司法記者クラブに知らせましたが、マスメディアは報道しませんでした。報じているのは『しんぶん赤旗』とフリーの鈴木祐太記者だけです。このままでは東京地検特捜部までが告発を軽視して不起訴にするのではないかと危惧しています。

パーティ収入明細の不記載問題は、パーティ券を購入した者との関係を隠蔽し、国民の知る権利を侵害する政治資金規正法違反ですから、報道機関は是非とも報道してほしいと思います」

安倍派や二階派ばかりが注目されているが、茂木派や麻生派、岸田派も不記載問題を抱えている。それだけでなく、上脇教授は公明党や日本維新の会のパーティ券不正疑惑に対しても刑事告発している。

鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

 

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