ミコライウの教師、リマールさんは学校の破壊に憤る。(2022年7月・玉本撮影)

◆学校にも砲撃

戦火のウクライナ。各地で連日のようにロシア軍からミサイルや砲弾が撃ち込まれる。狙われるのは、軍事施設や行政庁舎だけではない。住宅地や商店も標的だ。子どもたちが通う学校までも破壊されている。 (玉本英子・アジアプレス

ロシア軍のミサイルが炸裂したスーパーマーケット。隣接する集合住宅も破壊された。(2022年8月・ミコライウ・撮影:玉本英子)

私は昨夏、ロシア軍が近郊に展開する南部の都市ミコライウに入った。鉄筋アパートが立ち並ぶ大通りに行き交う人はまばらだった。ひっきりなしの砲撃で、町から逃れる住民があいついだためだ。ミサイルが炸裂したスーパーマーケットは、瓦礫やガラスが散乱し、爆発で地面が大きくえぐられていた。

オデーサに避難した教師、リマール・ミロスラヴァさんが見せてくれた写真。いまも両親が残るミコライウの自宅近くに着弾したミサイル。(2022年8月・オデーサ・撮影:玉本英子)

ミコライウを脱出した小学校教師、リマール・ミロスラヴァさん(24)は、自宅アパートが軍事空港に近く、ミサイル攻撃を恐れて昨年4月に町を出た。現在は、避難先のオデーサ市内の学校で教えている。避難後、両親が残るアパートが被弾し損傷。2週間前には、彼女が勤めていたミコライウの学校が破壊された。

「学校が砲撃されるたびに、ひとつまたひとつと校舎が消されていく。私たちの存在が抹殺されるかのように…」 リマールさんは言葉を詰まらせた。肩を震わせる彼女の目から、涙がこぼれ落ちた。

ロシア軍に制圧された東部ヴォルノヴァハから脱出してきた教師、ラリーサ・ネステレンコさん(53)。(2022年7月・オデーサ・撮影:玉本英子)

◆侵攻の町から脱出

ラリーサ・ネステレンコさん(53)は、東部ドネツク州の小さな町、ヴォルノヴァハの学校の教師だった。ロシア軍の侵攻が始まると、町は激しい砲撃にさらされた。水、ガス、電気も途絶えた。昨年2月、凍えるような寒さのなか、建物地下のシェルターで家族や隣人たちと肩を寄せ合った。 

ラリーサ・ネステレンコさんがヴォルノヴァハで教鞭をとっていた当時の写真。教え子や同僚の教師とも離れ離れになった。(写真:本人のSNSより)

路上には市民の死体があちこちに転がっていたが、砲弾や銃撃を恐れ、誰も近づけずに放置されていた。戦闘が一時収まったところを、家族で脱出。その後、町はロシア軍と親ロシア派勢力によって制圧された。いまはリマールさんと同じオデーサの学校で働く。

 

ロシア軍・親ロシア派勢力が2022年3月に制圧したウクライナ東部のヴォルノヴァハ。地図は取材時の2022年8月時点の状況。(地図作成:アジアプレス)

ヴォルノヴァハで教えていた小学6年の児童は30人。侵攻後、一部はドイツやポーランドなど周辺国に避難したが、多くはまだ町に残っている。ラリーサさんのSNSには、ヴォルノヴァハで撮った思い出の写真が並ぶ。職場の小学校、笑顔の児童たち…。離れ離れになった教え子たちとは今も安否を気遣うメッセージをかわす。再会できる日が来るかは分からない。故郷の町が占領されたなか、自分も家族も帰還できるのか、いつまで避難生活を送るのか見通せないままでいる。

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