自衛隊車両のドア部分には、ライフルホルダー(銃架)がついている。ここに掛けられている銃は、ベルギー製のFN SCARと思われる。(2024年4月末・ドネツク州・撮影:玉本英子)

◆ドネツク州の前線地帯に自衛隊車両

日本からウクライナに供与された自衛隊車両の1/2トントラックが、東部ドネツク州の最前線で人員の移送や弾薬を運ぶのに使われていることが、現場兵士の証言で分かった。話を聞いたのは兵士2人。いずれもウクライナ国防省指揮下の外国人義勇兵部隊に所属。(ウクライナ東部ドネツク州/玉本英子

<ウクライナ現地報告>自衛隊車両、東部戦線ドネツク州でロシア軍との戦闘任務に 現地取材で兵士証言【1】(写真 8枚)>>

ウクライナ国防省指揮下の義勇兵部隊でロシア軍と戦うベラルーシ出身の兵士B。「このクルマの性能は抜群だ。ただ、これは戦車のような代物ではないことも忘れてはならない」と話す。 (2024年4月末・ドネツク州・撮影:坂本卓)

◆ドアのライフルホルダーには89式小銃でなくFN SCAR

兵士Bは、ベラルーシからの義勇兵で、年齢は40歳。流暢な英語で話した。ロシア軍のウクライナ侵攻当初に義勇兵部隊に志願し、戦っているという。

― どんな任務でこの車両を使っていていますか、実際の使用感などを教えてください。
兵士B: 任務内容については話せない。でも、このミツビシは道なき荒れ野を走っても快適で堅牢だし、使い勝手は素晴らしい。最初はこれが20年ぐらい前のクルマだなんて信じられなかったよ。このクルマの性能は抜群だ。ただ、これは戦車のような代物ではないことも忘れてはならない。

ダッシュボードに貼られた「トランスファの使い方」。 (2024年4月末・ドネツク州・撮影:玉本英子)

― 日本国内では、戦争に巻き込まれる懸念もあるとして、武器を送るべきかの是非について議論がありました。あなたは前線で戦う兵士としてこのことについてどう思いますか?
兵士B: 日本は主権国家として、自国の国益があるのは当然だし、この世界紛争においても同様に、その国益に基づいて判断しているのだと思う。日本はロシアとクリル諸島(北方領土)問題も抱えているしね。あそこは俺の考えからすれば、日本に帰属する領土だ。
日本から受け取るいかなる物資も我々の役に立つだろう。なにより高品質だ。それらは前線では、それに見合ったふさわしい場所で使われるだろう。

◆ウクライナ支援と防衛装備移転

NATO弾を使う銃は、性能は良くても弾薬の供給不足の問題があるという。「弾薬がなくなると、殺したロシア兵の死体から自動小銃と弾薬を回収して使う」と話した。(2024年4月末・ドネツク州・撮影:玉本英子) 2分前

ウクライナへの自衛隊車両提供は、昨年5月、G7サミットで岸田首相が来日したゼレンスキー大統領に自衛隊車両提供を伝えたのを受け、防衛省において駐日ウクライナ大使に引き渡し式典が行なわれたものだ。ダークグリーン色そのままの自衛隊車両の提供は、「軍用も含む用途で使ってと日本が提供してくれた」とウクライナ側が受け止めるのは当然だ。軍事利用を避けたければ、送る前に赤や白に塗り替えておけば、消防や救急の用途で使われただろう。

「圧倒的に武器・弾薬が豊富な強力なロシア軍の前に、砲弾や銃弾、武器も足りない」と兵士は語る。(2024年4月末・ドネツク州・撮影:坂本卓)

ウクライナへの防衛装備品提供については、防衛装備移転三原則のかねあいもある。政府は自衛隊法に基づき運用しているとする。これまで自衛隊のヘルメットや防弾チョッキ、そして今回の車両と段階的に進んできたなか、いずれは弾薬も含む武器輸出拡大に道を開くことにつながるのではと懸念する声もある。今後、紛争当事国や、国際法違反の侵略を受けている国に対して、日本はどう向き合うのか、どんな支援があるのか、何が危惧されるのか、議論していく課題である。

ウクライナは左ハンドルだが、「日本の右ハンドルでも大した問題じゃない。英国からの軍用車両も右ハンドルだし」と兵士。(2024年4月末・ドネツク州・撮影:玉本英子)

今月1日、モスクワの戦勝記念公園で、ロシア軍が戦闘でウクライナ軍から鹵獲した西側の兵器がずらりと展示された。独レオパルトや米エイブラムス戦車まで並べられ、「これは敵対する西側諸国、NATOとの戦いだ」とロシア国民に強く印象付けた。自衛隊車両もいずれそのなかに入る日が来るかもしれない。それだけでなく、鹵獲された西側兵器は徹底的に解析され、材質から弱点まで分析されるだろうし、ロシアが中国や北朝鮮と武器・物資の見返りにその情報を共有することさえ想定される。防衛装備移転の議論は、そうした点まで見据えたうえでなされているだろうか。

取材後、走り去っていく1/2トントラック。(2024年4月末・ドネツク州・撮影:坂本卓)

東部の前線地帯を取材したのち、南部ヘルソンで地雷・不発弾処理の現場に向かった。そこでは日本が非常事態庁に提供した車両と地雷・金属探知機が活躍していた。処理班が地雷や不発弾を取り除き、住民は農作業が再開できると感謝していた。
それぞれの現場で見た日本のウクライナ支援のかたち、そのありようについてあらためて深く考えさせられた。

【解説: ウクライナへの自衛隊車両提供】
昨年5月21日、岸田首相は、G7広島サミット出席のため来日したゼレンスキー大統領と会談した際、100台規模の自衛隊車両や非常用糧食3万食分の提供について伝えた。同24日には防衛省で引き渡し式典が行なわれ、ウクライナのコルスンスキー駐日大使に自衛隊車両(1/2トントラック、高機動車、資材運搬車)の目録が引き渡された。提供車両は計101台。順次、ポーランド経由でウクライナに送られている。

防衛省が公開したウクライナに向かう自衛隊の1/2トントラックの写真。経由地のポーランドに到着した際のもの。 (2024年3月24日・防衛省公表写真より)
防衛省が公開したウクライナに向かう自衛隊の1/2トントラックの写真。経由地のポーランドに到着した際のもの。 (2024年3月24日・防衛省公表写真より)

 

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