◆ゴム硬板で応急の防護
ほかに自爆ドローン対策はしていますか?
カイザー車長:
ジャマーのほかには、ドローン対策としてルーフ部分にフレームを溶接して、その上に厚いゴム硬板を載せています。幌内の側面にもゴム硬板を取り付けました。
ゴム硬板だと弾頭は貫通するのでは?
カイザー車長:
以前、別の車両がやられたとき、ゴム硬板に穴は開きましたが、衝撃を吸収して、破片を拡散させたことがありました。とはいえ、ここに取り付けているものは一種の「お守り」のイコンのようなものかもしれません。何もないよりはマシといったところでしょうか。
(訳注:ウクライナでは交通安全の「お守り」としてキリストの肖像(イコン)を車内に貼ることがある)
「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(1)「反侵略」の立場から(全4回シリーズ)

運転中は(ドローンの)飛来音が聞けるように、いつも窓を開けています。走行は(ドローンに狙われないよう)、昼間を避け、日が暮れてからにしています。そして、走行時は(ドローンを振り切れるよう)猛烈な速度を出します。
ロシア軍のドローン戦術で、待ち伏せ攻撃というのがあります。ドローンが密かに飛来してきて、いったん地上や物陰に着陸して身を潜めてバッテリー消費を抑え、標的を発見したら一気に浮上して高速で襲い掛かってくる戦法です。私も実際に待ち伏せに出くわしたことがありますが、そのときは道路の正面にドローンが止まっていたので、ライトのハイビームを浴びせてからすぐにライトを消し、浮きあがった瞬間に真下を突っ切って、なんとか難を逃れました。
【映像資料】第157旅団とは別だが、自爆ドローンによる待ち伏せ攻撃の例。地上や物陰で身を潜め、標的が通りかかったら、一気に浮上して自爆攻撃。常時飛行していないので発見されにくく、バッテリー消費も抑えることができる。標的の車両の荷台にはジャマーが積んであるが効いていない。(テレグラム・The_Wrong_Sideより)

ご自身のことについて伺いますが、入隊前はどういう仕事でしたか? ご家族は、あなたが前線にいることに心配ではないですか?
カイザー車長:
私の場合は戦時動員で招集されました。クリヴィー・リフ出身で、入隊前は金属工場で働いていました。息子が2人いて、上の息子は警察官、下の息子は陸軍士官学校生です。そうしたこともあって、家族は皆、私のことを理解してくれています。

◆「停戦か、戦闘継続か」の問いには…
西側諸国には、「このまま戦闘継続か、領土を失っても停戦か」といった選択を迫るような議論がありますが、どう感じていますか?
カイザー車長:
部隊には、ヘルソンとザポリージャの被占領地域出身の仲間の兵士がいて、私と一緒に戦っています。彼らは故郷を放棄し、ロシアに譲り渡すようになることには反対しています。
プーチンに対して、何か言葉はありますか?
カイザー車長:
「クソ野郎!」とだけ言いたいです。
では、トランプに対して、何か言葉はありますか?
カイザー車長:
うーん、いまはそういうことを考えている場合でもないですから…。

日本国内では、軍事関連の装備を戦争中のウクライナに支援することへの議論があります。支援すべきとする主張がある一方、日本が戦争に引きずり込まれるのでは、という懸念の声もあります。それについて、どう思いますか?
カイザー車長:
私はこの車両を使う側の立場の兵士でしかありません。ですからひとつ私から言えるとしたら、この車両をもっと提供してほしい、そうすれば私たちの前線での問題はより少なくなる、ということだけです。


