ウクライナ軍が使う自衛隊車両 1/2トントラック(2025年4月・撮影:玉本英子)

◆ジャマー設置するも有線式自爆ドローンが出現

ウクライナ軍は各方面で苦戦を強いられている。自衛隊車両 1/2トントラックが3台配置されている第157独立機械化旅団は、ドネツク州ポクロウシク(ポクロフスク)の東方に伸びる戦域に展開。取材では、自衛隊車両が最前線のロシア軍との戦闘現場で使われている状況が明らかになった。部隊は、自爆ドローンの猛攻にさらされていた。全3回(取材・写真:玉本英子・アジアプレス)

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ドローン対策の無線妨害装置(ジャマー)アンテナ。簡易タイプで手作り工作感がある。2つの周波数帯のみ対応。大型で複数周波数帯対応のジャマーを付けた車両もある。(2025年4月・撮影:玉本英子)

◆「ジャマーだけでは防げなくなった」

いま、自爆ドローン攻撃が激しいですが、この車両には無線妨害装置(ジャマー)はありますか?

カイザー車長:

ドローンに対処する無線妨害装置(ジャマー)を取り付けています。ジャマーについては、一応、最大約100メートルで遠隔無線を遮断する仕様です。このジャマーの周波数は400~750MHz帯のうちの2つの周波数しか対応しません。ただロシア軍はドローンの周波数を切り替えてきます。最近は200MHz以下の周波数帯を使ってきます。

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アンテナからジャマーボックスにつなぐケーブル。ロシア軍は周波数帯を切り替えるドローンも運用するうえ、光ファイバーの有線式自爆ドローンも投入。ジャマーだけでは防げなくなった。(2025年4月・撮影:玉本英子)
ウクライナ軍・電子戦手段(РЕБ=レブ)には電子偵察(РЕР)、電子妨害(РЕП)、電子防護(РЕЗ)などがある。兵士はジャマーのことを「レブ」と呼ぶ。(2025年4月・撮影:玉本英子)

ジャマーは常時オンにしていて無線式自爆ドローンにはある程度は有効かもしれませんが、いま光ファイバーケーブルを使う有線式ドローンが登場し、それには対処できません。1月頃はそれほどでもなかったですが、この3週間は有線ドローンが大規模に使用され始めました。

これまでのところ、この車両自体がドローンの直接の攻撃で被弾したことはないですが、他の車両はやられています。うちの部隊では先週日曜日から2日間だけで、車両5台がやられました。ですから、幹線道は使わず、脇道や畑の中を走っています。三菱L200は夜間に幹線道に出たところを有線ドローンに突っ込まれました。2人が炸裂で破片を浴びて負傷し、入院しました。

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物理的な自爆ドローン対策として、ルーフに鉄のフレーム枠を取り付けて、その上に約5センチ厚のゴム硬板を載せている。その上には偽装網がかけてあった。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
後部のフレーム。ドローン対策で戦車や装甲車は金網で全体を囲う。兵士は網焼きに例えて「グリル」と呼ぶ。1/2tトラックの幌は金網だと貫通するうえ、資材不足もあり、取り急ぎゴム硬板に。(撮影:玉本英子)
前線地帯では、ジャマーを載せて走る軍関係車両を見かける。大型で強力なジャマーや小型タイプなど様々。周波数帯ごとに別々のアンテナで、無線妨害範囲は50~100mほどという。有線ドローンには効かない(2025年4月・クラマトルスク・撮影:玉本英子)

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