ウクライナ軍が使う自衛隊車両。元は警務隊の白い車だったが、ダークグレーに塗り直されていた。この車体はギア故障で不動に。ナンバープレートは軍所属車両を示す黒プレート(番号撮影は不可のためぼかしています)(2025年4月・撮影:玉本英子)

◆スペアなく兵士困憊

日本がウクライナに送った自衛隊車両。ドネツク州の激戦地、ポクロウシク(ポクロフスク)攻防戦を戦う第157独立機械化旅団の部隊に配置された1/2トントラックは3台。戦場での酷使で車体はダメージを受け、うち1台はギア故障でまったく使えない状態だった。資料や代替品互換パーツのリストがなく、兵士たちは困憊していた。様々な「重み」を背負ってウクライナに渡った自衛隊車両を現地で取材した。(全3回)3/3 (取材・写真:玉本英子・アジアプレス)

<独自・ウクライナ東部戦線 1>自衛隊車両、ポクロウシク攻防戦に投入、交換部品なくネット検索で入手

黒に近いダークグレーに塗り直された自衛隊・警務隊車両。ルーフ部分に赤色灯の取り付け台座が残っている。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
警務隊車両ゆえに元は白い塗装。ドアの内側は白いまま。ドア部分には小銃ホルダー(銃架)。通常、ダッシュボードのわきにある「防衛省」の銘板はなかった。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

◆「ギア故障でどうにもならず」

第157独立機械化旅団で迫撃砲隊が使う自衛隊車両「ミツィク」を見せてもらった現場には、もう1台、別の同型車があった。こちらも1/2トントラック。以前は自衛隊の警務隊が使っていたもので、下地は白。その上から黒に近いダークグレーでスプレー塗装がしてあった。ウクライナ側で塗ったものだろう。

この車両は、ギアが故障して、まったく動かない状態だった。
「故障してから部品をとっかえひっかえしてるんだが、どうにもこうにもならない」

兵士は、肩をすくめた。

<独自・ウクライナ東部戦線2>有線自爆ドローン攻撃に直面する自衛隊車両、ジャマー効かず(写真15枚)

故障しても、どのスペアが適合して修理できるのかがわからず、あきらめ顔の兵士。(2025年4月・撮影:玉本英子)
ギアが壊れて、トランスファーケースとディストリビューターを交換しようと試みたものの、失敗を繰り返していた。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
トランスファーケースを取り寄せたが適合せず、修理業者は落胆しながら持ち帰った。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)

ギアが壊れて、トランスファーケースとディストリビューターを交換しようと試みたものの、修理するにも資料もなく、解決方法がわからないという。いったん取り外して分解し、ネットで探して入手した部品を組み直しては、「またダメか」を繰り返していた。この日は修理業者の車がやってきて、適合しなかったトランスファーケースを2人で抱えてトランクに詰め込んでいた。兵士と業者の顔には徒労感がにじんでいた。

<ウクライナ東部>兵士の肖像 (1)前線の衛生兵 「精神力は極真空手で鍛えました」(写真14枚)

故障で動かなくなった自衛隊車両のダッシュボードには日本語ラベルが貼られたままだった。「できるはず、操縦手のドライブモードと、車長の点検」。(2025年4月・撮影:玉本英子)
「自衛隊の警察」、警務隊を象徴するサイレンも残っていた。綺麗に塗装されているようだが、オレンジのウインカーランプにスプレーのはみだしもある。(2025年4月・撮影:玉本英子)
「放射能線量測定済」NAGOYA・測定日2024のラベル。(2025年4月・撮影:玉本英子)

★新着記事