
◆スペアなく兵士困憊
日本がウクライナに送った自衛隊車両。ドネツク州の激戦地、ポクロウシク(ポクロフスク)攻防戦を戦う第157独立機械化旅団の部隊に配置された1/2トントラックは3台。戦場での酷使で車体はダメージを受け、うち1台はギア故障でまったく使えない状態だった。資料や代替品互換パーツのリストがなく、兵士たちは困憊していた。様々な「重み」を背負ってウクライナに渡った自衛隊車両を現地で取材した。(全3回)3/3 (取材・写真:玉本英子・アジアプレス)
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◆「ギア故障でどうにもならず」
第157独立機械化旅団で迫撃砲隊が使う自衛隊車両「ミツィク」を見せてもらった現場には、もう1台、別の同型車があった。こちらも1/2トントラック。以前は自衛隊の警務隊が使っていたもので、下地は白。その上から黒に近いダークグレーでスプレー塗装がしてあった。ウクライナ側で塗ったものだろう。
この車両は、ギアが故障して、まったく動かない状態だった。
「故障してから部品をとっかえひっかえしてるんだが、どうにもこうにもならない」
兵士は、肩をすくめた。
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ギアが壊れて、トランスファーケースとディストリビューターを交換しようと試みたものの、修理するにも資料もなく、解決方法がわからないという。いったん取り外して分解し、ネットで探して入手した部品を組み直しては、「またダメか」を繰り返していた。この日は修理業者の車がやってきて、適合しなかったトランスファーケースを2人で抱えてトランクに詰め込んでいた。兵士と業者の顔には徒労感がにじんでいた。
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