◆戦場の過酷な環境、「ドラゴン」も後輪不調
もう1台は、別部隊が使う車両で、運転する兵士がつけた愛称は「ドラゴン」。前線で弾薬や兵員の輸送に使っているという。後輪が不調になり、兵士が町の修理業者まで整備に来ていた。
「泥道や畑でも快適に走れるのはありがたい。でも自爆ドローン攻撃を振り切るために、荒れ地や金属片が散らばる道を全速力で走るから、車輪へのダメージが大きく、すぐガタついてしまう。週に何度かは、修理業者に持ってきて調整してもらわないといけない」
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戦場のような究極の環境で酷使すれば、どんな車両でも故障や不具合は起きる。交戦地帯では部隊の整備班もすべてに手が回らず、部品調達も困難だ。ただ、1/2トントラックはパジェロベースなので、故障してもスペアが見つかりやすいのでは、と取材前は推測した。だが、この車両がそもそもパジェロベースと知らない兵士もいた。現場で格闘していた彼らだが、それでも「日本には感謝している」という言葉を口にしていた。
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自衛隊車両を日本から輸送するコストを考えれば、ウクライナで一般的な民生用SUVを購入する費用を負担するほうが何台も買えるし、スペアパーツも調達しやすいだろうにと思ったが、じつはそう簡単なものでもないようだ。
ウクライナ人の軍事ジャーナリストに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「支援を軍や行政機関に送るのなら、効率が悪くても現物を送ったほうがいい。現金だと途中でどこかで一部が抜かれ、消えることがよくある。恥ずかしいが、この国の現実だ。私たちの敵は、ロシア軍だけでなく、国内にもたくさんいる」
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2年前には、ウクライナ国防省で軍用物資調達での価格不正をめぐる事件があいつぎ、レズニコウ国防大臣が辞任に追い込まれている。末端レベルでは、車両不足に直面する軍部隊のために車両を送ろうと呼びかけるボランティア団体の街頭募金に詐欺疑惑が出て、警察が捜査に乗り出したこともあった。
