◆防衛装備品移転と自衛隊車両
自衛隊車両に限らず、人道援助で送った物資のゆくえや使われ方は、とりわけ戦争という状況ではモニターしづらい。どのような支援の形が望ましいのかを考えるのは、難しい。



これまで、ウクライナ各地をまわり、復旧・復興用の建設重機、発電機、給水車、地雷処理機、医薬品など日本による人道支援の現場を取材してきた。
日本の国際協力機構(JICA)を通して送られた支援物資や機器には、「From the People of Japan」とのステッカーが貼ってあった。ミサイルで破壊された現場で瓦礫処理にあたる作業員、命がけで地雷処理に取り組む処理班隊員、救命活動に奔走する医療関係者からは、深い感謝の言葉が寄せられた。また、日本のNGOや民間レベルでの様々な援助、協力も人びとの命を救い、生活と心を支え、市民に歓迎されていた。
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2022年の侵攻当初、「国際法違反の侵略を受けるウクライナへの殺傷能力のない装備品輸出」として自衛隊のヘルメット、防弾チョッキが送られた。2023年5月には、G7広島サミットでのゼレンスキー大統領の来日に際し、岸田首相(当時)が自衛隊車両を100台規模で提供することを伝え、防衛省で引き渡し式典が行なわれた。その後、政府は防衛装備品移転3原則の運用指針を改定し、輸出できる武器・装備品の対象を拡大。安全保障政策の転換点の一つともなった。
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戦闘地域で使われる自衛隊車両の供与は「軍事」と「政治」の領域にかかわるゆえ、市民への人道支援とは別のベクトルになってしまう。様々な「重み」を背負った形でウクライナに渡った自衛隊車両。前線で故障して動かなくなった車両を見ながら、深く考え込んでしまった。
<ウクライナ東部>兵士の肖像(2・後編)「若い兵士の死はあまりに悲しい」 砲兵部隊 写真13枚



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