◆防衛装備品移転と自衛隊車両

自衛隊車両に限らず、人道援助で送った物資のゆくえや使われ方は、とりわけ戦争という状況ではモニターしづらい。どのような支援の形が望ましいのかを考えるのは、難しい。

ポクロウシク近郊の村でボール遊びをする少年たちの後ろを通過する1/2tトラック。車両の形状から、第157独立機械化旅団の「ドラゴン」ということが、あとでわかった。(2025年4月・撮影:アジアプレス)
ポクロウシク近郊の村を走る1/2tトラック。ロシア軍が迫るなか、この村はのちに住民避難対象区域となった。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:アジアプレス)
進撃してくるロシア軍に備え、ウクライナ軍は防衛ラインを何重にも構築。鉄条網とともに延びる白い三角ブロックは「竜の歯」。ただし、このブロックで防げるものではない。このほか対戦車壕も掘られている。ロシア軍の側も同様に「竜の歯」を設置しているが、写真より一回り大きい。(2025年4月・撮影:玉本英子)

これまで、ウクライナ各地をまわり、復旧・復興用の建設重機、発電機、給水車、地雷処理機、医薬品など日本による人道支援の現場を取材してきた。

日本の国際協力機構(JICA)を通して送られた支援物資や機器には、「From the People of Japan」とのステッカーが貼ってあった。ミサイルで破壊された現場で瓦礫処理にあたる作業員、命がけで地雷処理に取り組む処理班隊員、救命活動に奔走する医療関係者からは、深い感謝の言葉が寄せられた。また、日本のNGOや民間レベルでの様々な援助、協力も人びとの命を救い、生活と心を支え、市民に歓迎されていた。

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ハルキウ州で非常事態庁が使う地雷除去機。日本のウクライナ支援で送られた除去機だ。戦闘が激しかった地域には、地雷や不発弾が多数残る。(2025年4月・ハルキウ州・撮影:アジアプレス)
日本からウクライナに送られたクレーン車。ミサイルや自爆ドローン攻撃の現場で被害を受けた住宅地区の復旧用重機に使われている。ドニプロ市の職員は感謝していた(2025年4月・ドニプロ・撮影:玉本英子)

2022年の侵攻当初、「国際法違反の侵略を受けるウクライナへの殺傷能力のない装備品輸出」として自衛隊のヘルメット、防弾チョッキが送られた。2023年5月には、G7広島サミットでのゼレンスキー大統領の来日に際し、岸田首相(当時)が自衛隊車両を100台規模で提供することを伝え、防衛省で引き渡し式典が行なわれた。その後、政府は防衛装備品移転3原則の運用指針を改定し、輸出できる武器・装備品の対象を拡大。安全保障政策の転換点の一つともなった。

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日本からポーランド経由で輸送された自衛隊車両。ウクライナに引き渡された。(2023年12月・在ウクライナ日本国大使館公表写真)
警務隊の白い車両。このときは1/2tトラック、高機動車、資材運搬車、計101台が送られた。2025年2月にはさらに約30台を追加で送ることが伝えられた(2024年6月・在ウクライナ日本国大使館公表写真)

戦闘地域で使われる自衛隊車両の供与は「軍事」と「政治」の領域にかかわるゆえ、市民への人道支援とは別のベクトルになってしまう。様々な「重み」を背負った形でウクライナに渡った自衛隊車両。前線で故障して動かなくなった車両を見ながら、深く考え込んでしまった。

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ロシア軍の自爆ドローンが飛来しにくい地域まで移動して取材したが、ミサイルが飛んだり、数キロ先で砲弾が炸裂したりした。写真はミサイルが発射されたところ。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:玉本英子)
取材に協力してくれた第157独立機械化旅団の報道官。(2025年4月・ポクロウシク近郊・撮影:アジアプレス)
報道官の女性がつけていたウクライナ軍記章のパッチ。ピンクのキティちゃんっぽい。(2025年4月・撮影:玉本英子)

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【動画】<ウクライナ東部・現地報告>自衛隊車両、ポクロウシク攻防戦に投入、第157独立機械化旅団

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