◆抑止どころか戦争を誘発するリスクが高まる

「今回、初めて米軍がネメシスやタイフォンといった最新鋭のミサイル発射機を持ち込んで展開訓練をし、それに合わせて自衛隊も12式地対艦誘導弾の展開訓練をするなど、明らかに中国をにらんだ米軍と自衛隊のミサイル攻撃態勢づくりが、この大規模な日米共同実動訓練『レゾリュート・ドラゴン25』の狙いでしょう」

そう指摘するのは、陸上自衛隊(以下、陸自)の日出生台演習場や十文字原演習場での日米共同訓練・演習などの監視活動を続ける市民団体「ローカルネット大分・日出生台」事務局長の浦田龍次さん(62)だ。浦田さんは両演習場に隣接する温泉観光地の湯布院(大分県由布市)在住で、カフェを営む。

カメラを手に陸上自衛隊日出生台演習場での日米共同実動訓練の監視活動をする浦田龍次さん(2025年9月14日撮影)

「政府は、射程1000キロを超える長射程ミサイルの配備を、『反撃能力』の保有と称し、安全保障のための抑止力を高めると主張しています。しかし、実態は他国を先制攻撃もできる『敵基地攻撃能力』です」

「それは結果的に東アジアの軍拡競争を過熱させ、かえって『安全保障のジレンマ』(抑止のためと称して軍拡を進めれば、仮想敵国とされた側はそれを脅威と見なして軍拡を競う。緊張と対立が煽られ、抑止どころか戦争を誘発するリスクが高まることを指す)を招いてしまいます」

陸上自衛隊日出生台演習場と自衛隊の車両(2025年9月13日撮影)

「中国とロシアは岩国基地へのタイフォン持ち込みに反発を示しました。抑止が破れて戦争になれば、民間人にも多大な被害が及び、犠牲を強いられることになります」

こう語り終えて、浦田さんは顔を曇らせた。(つづく 4 >>

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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