◆戦争に向かう軍事対軍事の負の連鎖に巻き込まれる
玖珠町など地元の畜産農家は自衛隊との取り決めで、訓練に差しつかえない範囲で日出生台演習場内での牛の放牧や飼料にする牧草の採取を認められている。ところが、日米共同訓練などの規模拡大、訓練スケジュールの過密化により、演習場内への立ち入りが制限され、十分な牧草の採取ができないなど支障が出ている。

「毎年9月~11月は茂った牧草を刈り取る時期にあたるのに、日米共同訓練などが増えると刈り取りができなくなり、近年、牛の飼料が値上がりするなか、みんな困っているのです。今回の防衛省九州防衛局の住民説明会でも不満の声があふれました」

そう訴えるのは、演習場に隣接する玖珠町の小野原地区に住み、畜産を営んできた衛藤美和さん(62)だ。そして、次のように憂いの言葉を発した。

「日米共同訓練の規模拡大や長射程ミサイルの配備など、いまの政府のやり方を見ていると、戦争に向かう軍事対軍事の負の連鎖に巻き込まれているとしか思えません。しかし、このままでいいはずはありません。ひとたび戦争になれば、物が壊され、人が殺され、取り返しのつかないことになってしまいます……」(つづく)
吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。
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