◆米日軍事一体化のもと自衛隊制服組が暴走か

陸上自衛隊も各地の師団・旅団の部隊を一元的に運用する陸上総隊を創設した。その司令
部は陸自朝霞駐屯地(東京都練馬区)にある。同司令部のもとで、在日米陸軍との緊密な連絡調整を担う日米共同部も発足した。その配置先は米陸軍キャンプ座間(神奈川県)基地内の陸自座間駐屯地である。

海上自衛隊の横須賀基地、事実上の空母「いずも」(ヘリコプター搭載護衛艦)が停泊(2024年6月29日撮影)

海上自衛隊も、横須賀基地の自衛艦隊司令部が米海軍横須賀基地の在日米海軍司令部・米第7艦隊司令部と緊密に連携し、司令部機能の一体化が進んでいる。

海上自衛隊の横須賀基地に停泊するイージス艦などの護衛艦(2024年6月29日撮影)

巡航ミサイル「トマホーク」が搭載される自衛隊イージス艦には、米軍のイージス艦や早期警戒機とレーダー情報を共有して攻撃もできる共同交戦能力(CEC)を備えるもの(「まや」「はぐろ」)もすでにあり、集団的自衛権の行使に結びつく武力行使の一体化のシステムが整う。自衛隊はトマホーク発射の訓練も米軍から受けている。

米海軍横須賀基地に停泊するイージス艦などの軍艦(2024年6月29日撮影)

自衛隊と米軍の共同作戦の能力の維持、向上のための共同指揮所演習(図上演習)「ヤマサクラ」も毎年実施されている。

2024年2月の日米共同指揮所演習(図上演習)「キーン・エッジ」では、台湾有事を想定し、侵攻する中国軍艦に、自衛隊機がミサイル攻撃をおこなう判断もなされた。さらに、中国側が核兵器の使用を示唆したとの想定で、自衛隊が米軍に「核の威嚇」で対抗するよう求め、米軍も応じたと、今年7月に共同通信が報じた(防衛省は否定)。

在日米軍司令部のある横田基地をフェンスごしに見る(2018年1月24日撮影)

それが事実なら、まさに自衛隊制服組の暴走にほかならない。近年、防衛省内で制服組の発言力が増し、自衛隊と米軍の間で部隊運用や作戦の連携強化など米日軍事一体化が進んでいることも、こうした問題が起きる背景にあるとみられる。

日本は「非核三原則」を掲げてきた。公式な政府方針に沿わず国会の議論も経ずに、自衛隊制服組が文民統制や国民の目から離れて独自の「国策」づくりに走るのは、戦前に実質的な統帥権を握った軍部が暴走した状況と似ている。核戦争にまでエスカレートしかねないことを要求しているのであれば、非常に憂慮すべき事態である。(つづく)

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

【連載】「戦争をする国」に変わってもいいのか?! 大軍拡・戦争準備の現場から 記事一覧

 

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