日本が送った地雷・金属探知機を手にする非常事態庁の爆発物処理班隊員。(2024年5月・ヘルソン州ミルネ村・撮影・玉本英子)

◆ロシア軍退却したヘルソン西部、畑には一面に地雷・砲弾片

ロシア軍とウクライナ軍の激しい攻防が続いたヘルソン近郊。3年前にロシア軍が撤退したヘルソン西部には、農村地帯には無数の地雷と不発弾が残された。爆発物処理の現場には日本と韓国が支援した機器が投入されていた。昨年と今年、ウクライナ各地で「日本の支援」の現場を追った連続シリーズ・全3回。(取材・写真:玉本英子・アジアプレス) (1/3)

2022年夏、ロシア軍がすぐ先まで迫っていたヘルソン西部の村。激しい砲撃にさらされていた。(2022年8月・ヘルソン州ノヴァ・ゾリャ村・撮影・アジアプレス)
2022年6月時点のヘルソン西部の村落部。ロシア軍とウクライナ軍が対峙するラインには双方が多数の地雷を敷設。のちにロシア軍はヘルソン東部に退却したが、地雷と不発弾が残された。(地図作成:アジアプレス)

◆緊張の地雷処理現場

ヘルソン西方の農村地帯。ここではロシア軍とウクライナ軍との激しい攻防が繰り広げられた。ポサド・ポクロフスケ村は両軍が対峙した境界線に位置し、一帯には大量の地雷が敷設された。

2022年11月、ロシア軍はヘルソン西部からドニプロ川東岸まで退却。ウクライナ軍が奪還した地域には住民が徐々に村に戻りつつあったが、元通りの生活が返ってきたわけではなかった。農家が直面したのは、広大な耕作地に残った地雷と不発弾だった。昨年5月、私はポサド・ポクロフスケ村とミルネ村での処理作業に密着した。

砲弾片と残骸。グラート、ウラガン、スメルチなど様々な多連装ロケット砲から発射されたものだ。手前の一番長いのがスメルチの砲弾。クラスター爆弾、9N210、9N235などが装填され、広範囲に飛散。(2024年5月・ヘルソン州ポサド・ポクロフスケ村・撮影・アジアプレス)

国家非常事態庁(DSNS)の爆発物処理班は、連日、危険な現場に入り、爆発物の撤去に当たる。処理班の隊長から指示を受ける。

「いまから処理作業の現場に入ります。地面にあるものに絶対に手を触れてないように。農道は、隊員が歩いた轍(わだち)以外は足を踏み入れないこと。まだ地雷があちこちに埋まっている」


日本が支援した地雷・金属探知機を使って農地を進む処理班の隊員。地雷処理車両が入れない側道や茂みは、隊員が爆発物を探し、処理する。危険な任務だ。(2024年5月・ヘルソン州ミルネ村・撮影・玉本英子)
日本の支援で送られた地雷・金属探知機。のちにプラスチック製の地雷にも対応する改良型も出ている。(2024年5月・ヘルソン州ミルネ村・撮影・玉本英子)

ボディアーマーとヘルメットを装着し、隊員たちのあとに続いて、足先に目をやりながら歩く。「地雷・危険」と書かれた赤い警告板の脇には、処理班が回収した砲弾片が積まれていた。赤と白のテープが張られた先は地雷が未処理の区域だ。

一面に広がる畑。緑の麦穂が伸びる地区はすでに撤去が終わり、その先の土がむき出しのエリアはこれから作業が始まる。ここでは、ブルドーザー型のキャピラ車に鉄製ローラーが付いた地雷処理車と、地雷・金属探知機の両方を使って撤去処理作業が進められていた。

非常事態庁が運用するブルドーザー型の地雷処理車両GCS-200。グローバル・クリアランス・ソリューションズ社(本社・スイス)が開発した処理車。(2024年5月・ヘルソン州ミルネ村・撮影・玉本英子)
遠隔操作で走行し、前方のローラーを回転させながら地雷を爆破処理する。(2024年5月・ヘルソン州ミルネ村・撮影・玉本英子)

無線式リモートコントローラーを手にした隊員がスイッチを入れると、百メートルほど先の無人処理車が排気音を轟かせ、畑をゆっくり進み始めた。鉄製ローラーがうなりをあげて回転し、土をたたきつけていく。

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