◆弾薬庫の増設と空港・港湾の軍事利用が進む

自衛隊と米軍は台湾有事を想定した共同作戦計画を立て、「レゾリュート・ドラゴン」(「不屈の竜」)や「キーン・ソード」(「鋭い剣」)などの、実戦的な日米共同訓練・演習を繰り返している。

佐賀空港に隣接する陸上自衛隊佐賀駐屯地の完成間近のオスプレイ格納庫と隊庁舎(2025年5月31日撮影)

沖縄・九州はじめ全国の戦場化と、民間人にも被害が及ぶ事態を前提にしたものだ。沖縄と九州の各地に陸自のミサイル部隊が次々と配備され、弾薬庫、オスプレイの基地(佐賀)も造られ、中国をにらんだ軍事要塞化が進む。

陸上自衛隊大分分屯地の弾薬庫(敷戸弾薬庫)の正門(2023年11月12日撮影)

主に長射程ミサイルの保管に備える弾薬庫は、今後130増設される計画で、沖縄、九州だけでなく京都府、青森県、北海道でも施工される。

「自衛隊統合演習」で航空自衛隊F2戦闘機の訓練がおこなわれた大分空港(2023年11月13日撮影)

また、政府は今年8月の時点で、沖縄から北海道まで計40ヵ所の民間空港・港湾(14空港、26港湾)を「特定利用空港・港湾」に指定し、自衛隊が平時の訓練から有事の出撃まで軍事利用できるシステムを築こうとしている(おそらく米軍もなしくずし的に利用するだろう)。

大分空港に着陸する航空自衛隊F2戦闘機(2023年11月13日撮影)

九州・沖縄はじめ各地の航空自衛隊基地がミサイルなどで攻撃されて使用できなくなった場合に備え、大分・北九州・長崎・福江・熊本・宮崎・奄美・徳之島・岡山などの各民間空港に自衛隊の戦闘機やヘリコプターなどが離着陸して、燃料給油や機体点検をする訓練が、2023年以降すでにおこなわれている。そのなかには「特定利用空港・港湾」に未指定のところもふくまれる。

さらに、自衛隊は戦死者の遺体取り扱い訓練もしている。負傷者への輸血用血液製剤の確保のため、自衛隊員二十数万人から採血して製造・備蓄する計画に着手し、米軍との相互運用も検討している。

大分空港で燃料給油を受ける航空自衛隊F2戦闘機(2023年11月13日撮影)

日本全土で有事体制すなわち戦争準備が着々と整えられている。抑止力の名のもと軍事力一辺倒・アメリカ一辺倒で、東アジアにおける戦争回避のための対話と信頼醸成の外交努力をなおざりにした「安保3文書」による大軍拡が進む。(つづく)

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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