今年8月、防衛省は今年度中に長射程ミサイルの12式地対艦誘導弾能力向上型を、健軍駐屯地(熊本市)の第5地対艦ミサイル連隊に配備すると発表した。引き続き他の駐屯地などにも配備を進める方針である。他国への先制攻撃も可能な長射程ミサイルは、抑止力どころかかえって軍拡競争と戦争の危機を招きかねない。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)
◆有名な温泉観光地が他国攻撃の一大軍事拠点に
「ここ陸上自衛隊の湯布院駐屯地(大分県由布市)には、九州、奄美、沖縄の地対艦ミサイル部隊(3つの連隊とその傘下の各中隊)を指揮する第2特科団本部が置かれ、300人規模の第8地対艦ミサイル連隊も今年3月に発足したので、12式地対艦誘導弾能力向上型の有力な配備先とみられます」

そう述べるのは、湯布院駐屯地へのミサイル配備に反対する市民団体「湯布院ミサイル問題ネット」事務局の鯨津[ときつ]憲司さん(74)だ。

12式地対艦誘導弾能力向上型の射程は約1000キロ。湯布院からだと、上海など中国沿海部や北朝鮮の全土に届く。ミサイル連隊は隣接する広大な陸自の日出生台演習場で訓練を積み、戦時にはそこで部隊展開してミサイルを発射することになるだろう。

また湯布院駐屯地には、近い将来に射程2000キロを超える対地攻撃ミサイル、高速滑空弾(島嶼防衛用と政府は称する)を運用するとみられる多連装ロケット中隊も配置されている。名高い温泉観光地で中国、香港、台湾、韓国など東アジアからの外国人客も多い湯布院が、いまや他国攻撃の一大軍事拠点になろうとしている。

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