◆長射程ミサイル配備に対する住民の疑問と不安

「他国領域を射程に入れる長射程ミサイルは『専守防衛』を逸脱し、運用によっては国際法違反の先制攻撃につながります。それらの配備は東アジアの緊張を一層高めます。政府はミサイル配備を抑止力強化による戦争防止のためと主張しますが、逆に軍拡競争の悪循環におちいらせ、戦争の抑止どころか偶発的な武力衝突など不測の事態から、戦争の危機を招き寄せるおそれがあります」

陸上自衛隊湯布院駐屯地の正門前で第8地対艦ミサイル連隊の発足に対する抗議文を自衛官に向けて読み上げる鯨津憲司さん(2025年3月30日撮影)

「住民の間では、『他国を攻撃する長射程ミサイルを配備すると、逆に他国から攻撃されるのではないか』、『自分の町から他国の人びとに向けてミサイルが発射されることは受け入れがたい』、『観光などの仕事への影響はないか』、『そんな危険なものを配備した町で子育てができるのか』、『重大な問題なのに防衛省から住民に対して説明がないのはおかしい』など、疑問や不安の声があがっています」

前出の鯨津さんは、そう強い懸念を示す。

今年3月30日、「湯布院ミサイル問題ネット」や陸自大分分屯地の大型弾薬庫増設に反対する「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」など市民団体のメンバーなど30人近くが、湯布院駐屯地の正門前で「NO!ミサイル」、「湯布院を戦場にしないで」などの横断幕やプラカードを手に、第8地対艦ミサイル連隊の発足式典に抗議するスタンディングをおこなった。

陸上自衛隊湯布院駐屯地の正門前で、第8地対艦ミサイル連隊の発足式典に抗議するスタンディングをおこなう市民団体のメンバーなど(2025年3月30日撮影)

「他国の人びとを殺傷する長射程ミサイルの配備は受け入れられない」、「私たちは戦争の被害者にも加害者にもなりたくない」などのアピールの声が響いた。(つづく 11 >>

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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