自衛隊は長射程ミサイルの導入以前から、敵基地・敵国攻撃能力を持つ兵器の導入をすでに進めてきた。ヘリコプター搭載護衛艦の「いずも」と「かが」を事実上の空母に改修して、甲板から短距離離陸・垂直離着陸できる最新鋭のF35Bステルス戦闘機を配備する。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)

◆専守防衛を逸脱して軍事大国化を目指す「安保3文書」

F35戦闘機やF15戦闘機に搭載する長距離ミサイル(射程約500キロのノルウェー製の空対艦・空対地ミサイル、射程約900キロのアメリカ製の空対地ミサイル)も輸入して配備する。

海上自衛隊の横須賀基地に停泊する事実上の空母「いずも」(ヘリコプター搭載護衛艦)(2024年6月29日撮影)

「安保3文書」は「専守防衛に徹し」て「他国に脅威を与える軍事大国」にはならないというが、あまりにも事実と異なる。「反撃能力」と言い換えてごまかしているが、実態は中国や北朝鮮の領土などに届く長射程ミサイルの配備を中心とする敵基地・敵国攻撃能力の保有を柱とし、専守防衛を逸脱する軍事大国化を目指すものだ。

大分空港から離陸して築城基地に向かう航空自衛隊F2戦闘機(2023年11月13日撮影)

他国に脅威を与える長射程ミサイルなど攻撃性の高い兵器の保有は、憲法9条に違反する。これまで政府は国会答弁で、敵基地攻撃は「法理的には自衛の範囲で可能」としつつ、「他国に攻撃的な脅威を与える兵器」の保有は「憲法の趣旨ではない」としてきた。

陸上自衛隊湯布院駐屯地、車両搭載式の12式地対艦誘導弾(ミサイル)の発射筒と自衛隊員(2025年3月30日撮影)

1972年には当時の田中角栄首相が国会答弁で、「専守防衛」とは「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱら我が国及びその周辺において防衛をおこなうこと」と答弁し、敵基地攻撃は専守防衛に反すると明言した。

それを国会での議論抜きに岸田政権は2022年に閣議決定で覆した。立憲主義を無視する手法で、第2次安倍政権による2014年の集団的自衛権の行使容認の閣議決定から続く政府・自民党の悪習といえる。

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