◆軍事費膨張と有事体制=戦争体制づくり
アメリカ政府からの「防衛費(軍事費)の対GDP比2パーセントへの増額」要求に従い、政府は2023年度~27年度の5年間の軍事費を計43兆円程度に増額中である。今年度予算では約8兆7000億円(米軍再編関係経費などもふくむ)と、膨張する一方だ。そして、トランプ政権は対GDP比3・5パーセントへのさらなる増額(年間約21兆円にも達する)を求めてきている。
しかも高市新政権は年間軍事費の対GDP比2パーセントへの増額を、今年度中に関連経費も合わせ前倒しして達成したうえで、さらに増額する姿勢をみせている。長射程ミサイルの垂直発射装置搭載の長期潜航可能な潜水艦(原子力活用をも想定)の導入、武器輸出のさらなる促進など、軍拡を加速させる政策も掲げている。
大軍拡は軍事費をとめどなく膨張させる。国家財政を圧迫し、増税、社会保障費や教育費の削減などの国民負担が待ち受ける。国債も乱発され、政府の借金の増加、すなわち財政赤字と日銀財務のさらなる悪化を招く。国民・市民の生活に重い負担、悪影響が及ぶ。

「安保3文書」による大軍拡の背景には、アメリカの要求と、それに呼応して、第2次安倍晋三政権以来、右派政治家の主導で軍事大国化を目指す自民党内・政府内の思惑がある。
第2次安倍政権は2014年に、これまで違憲とされてきた集団的自衛権の行使を、強引な閣
議決定による解釈改憲で容認し、専守防衛の原則を空洞化させた。翌年成立の安保法制(戦
争法制)では、自衛隊が米軍に付き従って戦争ができる法制度を整えた。
「安保法制」により自衛隊は海外で地理的な限定もなく、世界中どこでも米軍の兵員や武器などの輸送、弾薬の提供、燃料などの補給、装備の修理・整備、基地などの建設、通信、負傷兵の治療、捜索救助活動など、幅広い軍事支援ができるようになった。集団的自衛権を行使する場合は、米軍とともに戦闘まですることになる。

第2次安倍政権と続く菅政権、岸田政権、石破政権のもと、特定秘密保護法の制定、盗聴法(通信傍受法)の改正(盗聴対象の拡大など)、共謀罪を新設した改正組織犯罪処罰法の制定、基地周辺住民の監視につながる土地利用規制法の制定、インターネット上の情報監視を強める能動的サイバー防御法の制定など、「知る権利」を侵害し、国民監視を強める一連の治安立法がなされてきた。
そして、高市新政権は表現・言論の自由と「知る権利」を侵害し、国民・市民監視を強め戦争反対の運動を封じる狙いも秘めたスパイ防止法の制定や、日本版CIAともいえる諜報機関「対外情報庁」創設に向けた「国家情報局」の創設など、強権的な方針を打ち出している。

軍拡路線・米日軍事一体化とパラレルなそうした動きは、有事体制=戦争体制づくりの一環にほかならない。(つづく)
吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。






















