他国を先制攻撃もできる自衛隊の長射程ミサイル配備に向けた動きが着々と進む。大量のミサイルを保管する弾薬庫の増設が全国各地で計画され、工事もおこなわれている。ミサイルの配備基地も、弾薬庫も戦争が起きれば攻撃対象となり、周辺住民も巻き添えになる。しかし、政府はその重大なリスクについて説明責任をはたそうとしない。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)
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◆ミサイルを保管するための大型弾薬庫が建設中
「自衛隊は射程約1000キロの12式地対艦誘導弾能力向上型を、今年度中に陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本市)の第5地対艦ミサイル連隊に配備し、さらに他の自衛隊施設への配備を進めるとしています。湯布院駐屯地(大分県由布市)もそのひとつでしょう。同駐屯地にはすでに九州、奄美、沖縄の対艦ミサイル部隊を指揮する第2特科団本部が置かれています」
そう説明するのは、湯布院駐屯地へのミサイル配備に反対する市民団体「湯布院ミサイル問題ネット」事務局の鯨津[ときつ]憲司さん(74)だ。

「この第2特科団本部からのミサイル発射の指令で九州、沖縄そして東アジアを戦争に巻き込んでしまうおそれがあります。ウクライナでもガザでもミサイル攻撃で多くの市民の尊い命が失われています。私たちの町、湯布院からそのような悲劇が生み出されることは、とうてい受け入れられません。また逆に標的とされた自衛隊員と住民が戦禍に巻き込まれ、犠牲になることも認められません」と、鯨津さんは一語一語に力をこめる。

湯布院から東南東に直線で約25キロ、車で高速道路を使えば40分ほどの大分市にある陸上自衛隊大分分屯地(通称、敷戸弾薬庫)では、大型弾薬庫が建設中である。既存の弾薬庫(棟数は非公開)に加え、新たに9棟を増設する計画だ。2023年11月に着工した1棟目は、今年12月に完成する予定である。

そこには将来的に、三菱重工が開発・量産する長射程ミサイル12式地対艦誘導弾能力向上型も保管されるとみられ、湯布院駐屯地の第8地対艦ミサイル連隊や健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊の使用にも供されるだろう。

この弾薬庫増設は、「安保3文書」にもとづく自衛隊の「十分な継戦能力の確保・維持」のため、「必要十分な弾薬を早急に保有」することに対応した、全国各地での弾薬庫130棟増設計画の一環である。

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