本連載第4回でも述べたように、政府は「安保3文書」にもとづく大軍拡、すなわち他国攻撃が可能な長射程ミサイル配備を中心とする自衛隊の攻撃力の強化、米軍との共同作戦能力の向上を進めるに際し、仮に有事=戦争が起きた場合は、民間人にも被害が及ぶことを前提に戦略を立てている。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)
◆日本全土の戦場化と戦争の長期化、核戦争までも想定
それは、自衛隊がミサイルなどで敵基地を攻撃した場合、他国からやはりミサイルなどで反撃され被害が生じる可能性を認めた政府の国会答弁や、「国家防衛戦略」に、「万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻」が起きた場合も想定して対処するとの方針が記されていることからもわかる。

また、日本全土の戦場化と戦争の長期化、核戦争へのエスカレートまでも想定して、ミサイルや核攻撃にも耐え得る自衛隊基地の「強靭化」(司令部の地下化など)を全国各地で進めていることからも、それは明らかだ。

ミサイルが基地や弾薬庫に命中せず、周辺の住宅地や諸施設に着弾し、破壊と流血の被害が住民にも及ぶことは、ウクライナやガザの惨状が示している。

さらに政府は台湾有事を念頭に、沖縄県の先島諸島(宮古島や石垣島など)が戦場となることを想定し、住民と観光客計約12万人を九州各県と山口県に避難させる計画も定めている。

しかも、100万人以上が住み、米軍と自衛隊の基地が集中し、戦場と化す可能性の高い沖縄本島については、政府は単なる「屋内退避」を想定している。これもまさに戦争が起きた場合の住民の犠牲も想定ずみ、織り込みずみの戦略を立てている証拠である。

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