長射程ミサイルの配備などの大軍拡と米日軍事一体化の現状から、日本がふたたび戦争の加害者になりかねないとの危惧を抱くことは、けっして取り越し苦労ではない。政府は長射程ミサイルによる攻撃で敵国の民間人に死傷者が出ることも想定したうえで、戦争準備を進めている。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)
◆他国の人びとに犠牲を強いることを前提に長射程ミサイルを配備
『しんぶん赤旗日曜版』(2025年1月19日)のスクープ「市民死傷も想定 自衛隊 ミサイルによる『敵基地攻撃』」(田中一郎記者)によると、同紙編集部の情報公開請求に対し防衛省が開示した内部文書「統合ターゲティングに関する米国委託教育への参加」で、自衛隊が長射程ミサイルで他国を攻撃した場合に「どれだけの民間人が巻き添えで死傷するのか――その推定法を教える米軍機関」に、幹部自衛官が派遣されていたことが明らかになった。

政府は「敵基地攻撃で相手国の民間人に死傷者が出ることまで想定」したうえで、長射程ミサイル配備を中心とする大軍拡・戦争準備を進めているのである。
前出の「米軍機関」とは、「統合ターゲティングスクール」といい、自衛隊は2023年度と24年度にそれぞれ3人の幹部自衛官を派遣していた。25年度も派遣用の予算800万円を計上している。

ターゲティングとは「(攻撃)目標を選択し、優先順位をつけ、適切な対応策で対抗する一連の行為」(米国防総省)である。そのなかには、ミサイルなどの標的である「軍事目標」への攻撃に際し、「巻き添えで生じる民間人の死傷や民用物の損傷」すなわち「付随的損害」の程度を見積もる「付随的損害見積」もふくまれる。それは「統合ターゲティングスクール」の「主要教育内容」のひとつに位置づけられている。

このように自衛隊は、米軍と同じように民間人の犠牲を「付随的損害」として当然視し、計算に入れたうえで、軍事作戦を遂行しようと考えているのだ。まさに他国の人びとに流血の犠牲と受忍を強いることを前提とした恐るべき発想である。大軍拡・戦争準備の実態はここまでエスカレートしている。
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