◆日本がふたたび戦争の加害者になってしまいかねない

各地で自衛隊のミサイル部隊配備や弾薬庫増設、オスプレイ基地建設、民間空港・港湾の軍事利用などに反対する人たちが、口をそろえて語るのは、「戦争の被害者にも加害者にもなりたくない」ということだ。

たとえば陸上自衛隊大分分屯地の弾薬庫増設に反対する「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」(以下、市民の会)共同代表の宮成昭裕(75)さんは、次のように故郷大分の戦争拠点化に危機感を抱いている。

陸自大分分屯地弾薬庫付近の建物。向こうの丘陵にトンネル式の弾薬庫がある(2023年11月12日撮影)

「長射程ミサイルは専守防衛に徹する装備ではなく、先制攻撃にも使えます。もしも台湾有事が起きたら、米軍の戦略に従って自衛隊の参戦もありえます。大分県からミサイル攻撃をすれば、中国側から反撃されます。そんな戦争の加害者にも被害者にもなる事態は絶対に避けなければなりません」

陸自大分分屯地弾薬庫のゲート前に立つ宮成昭裕さん(2023年11月12日撮影)

同じく「市民の会」の運営委員で元中学校英語教師の池田年宏さん(60)は、「大分市が1979年に中国の武漢市と友好都市提携をして、交流を積み重ねてきた」ことを踏まえて、「この平和的な友好関係にある武漢市に、中国の人びとにミサイルを向けることなどあってはなりません」と述べ、

陸上自衛隊湯布院駐屯地の正門前で、第8地対艦ミサイル連隊の発足式典に抗議するスタンディングをおこなう池田年宏さん(2025年3月30日撮影)

「増設した大分の弾薬庫に保管されたミサイルを、湯布院駐屯地のミサイル部隊が発射して、海の向こうの人たちのいのちを奪うかもしれないという事態を想像してみてください」と、日本がふたたび「戦争の加害者になってしまいかねない」ことへの気づきをうながす。
そして、こう強調した。

「軍拡をして友好都市にミサイルを向けるのではなく、『紛争の平和的解決、武力の行使や威嚇の禁止』を謳う日中平和友好条約のもと、国境を越えて民間どうし、自治体どうしで交流し、友好を積み重ねることこそが、戦争を防ぐ道です」(つづく 17 >>

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

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