◆せめて労働者と同等の検診を
その結果、8月の検討会で示された2026年度の調査計画では、〈「本調査の胸部CT検査の受診歴がある参加者」については、胸部エックス線検査で石綿関連所見があり、かつ、その所見に変化が見られた者とする〉と、レントゲン検査で症状が悪化している場合のみ、胸部CT検査を受けられるとした。
過去に要精密検査とされた受診者は毎年、胸部CT検査を受けることができたが、今後は「所見に変化」すなわち悪化した場合だけに縮小された。市は「現行よりも胸部CT検査の受診機会が抑制されています」と説明する。
国のこうした対応に尼崎市は、不要な放射線ばく露は避けるべきとの国の方針に理解を示しつつ、〈これまでのように胸部X線(レントゲン)検査を受診した後に、胸部CT検査を受診できなければ、「次年度の胸部X線検査までの期間が長くなり、進行が早い中皮腫を発症した場合は重篤化が危惧される」、「胸部CT検査による受診者へのフォローがなくなることで、健康不安を解消できる手立てがなくなる」といったことが懸念されるため、胸部CT検査に代わる手法として、同一年度内に胸部X線検査の再検査を要望することで、石綿関連疾患の早期発見や早期治療、石綿被害に対する市民の不安解消に繋げていきたい〉と同省に要望した。
若干わかりにくいので補足すると、胸部レントゲン検査後に専門医による判定委員会などを経て受診者に結果が伝えられるまでに数カ月かかり、胸部CT検査を受けるのはさらにその後になる。約半年後ということもあるという。これが結果として、フォローアップになっていた実態がある。
ところが今回の変更により、石綿ばく露でできる“タコ”のような胸膜プラークが拡大するなど変化があった場合だけしか胸部CT検査を受けられなくなったことで、1年後まで検診がない状態になってしまう。
中皮腫は進行が非常に早いため、早期発見のためにせめて半年後に希望者が胸部レントゲン検査を受けることができるようにしてほしいというのが尼崎市の要望である。
クボタ旧神崎工場周辺の被害者を多数支援してきた前出・飯田氏は以前から、「クボタ旧神崎工場の周辺住民らはほとんど労働者と同じくらい石綿を吸わされてきたのではないか」と指摘してきた。
事実、高濃度の石綿ばく露でしか発症しないとされてきた石綿肺が(石綿関連の職業歴もない)同工場の周辺住民に見つかり、国の救済制度で認定され、同社が救済金を支払った事例もある。
多数の患者を支援し、国の検診への参加を呼びかける活動にも取り組んできたアスベスト患者と家族の会連絡会役員の古川和子さんは、「労働者と住民に差をつけるのがおかしいんですよ。労働者はリスクが高いから半年に1回の検診で、住民はそうではないから年1回の検診というのかもしれないが、クボタの(旧神崎)から何百メートルも離れた場所の住民に石綿関連の仕事をしたこともないのに(高濃度の石綿ばく露でしか発症しない)石綿肺の患者も出ています。石綿工場の周辺に住む人たちは労働ばく露に近い状況だった。だから健康管理なら労働者と差をつけず、半年に1回、少なくともレントゲン検査は受けられるようすべきです」と訴える。
すでに述べたように「石綿健康管理手帳」を持つ労働者や元労働者は年2回の検診だ。会社の検診から数カ月後に調子を崩して受診したところ中皮腫の発症が明らかになった事例もある。公平性の観点からも労働者らと同等に、希望者に対し半年1回のレントゲン検査とすることに問題はないはずだ。











![<北朝鮮>[写真・動画]栄養失調で衰弱する人民軍兵士「激やせ」で動けぬ者も <北朝鮮>[写真・動画]栄養失調で衰弱する人民軍兵士「激やせ」で動けぬ者も](https://www.asiapress.org/apn/wp-content/uploads/2011/09/20130807-nk011k.jpg)











