長野県飯島町が発注した工作物の解体工事でアスベスト(石綿)対策が不適正だったと発注者の町が自ら指摘し、その後も対策が講じられなかったとして工事停止を命じる異例の事態が起きている。一体どういうことなのだろうか。(井部正之)

12月3日午前に「アスベストが飛散」する不適正作業がされていたという工作物解体の現場。発注者の長野県飯島町は指導したが、改善されなかったとして作業停止を命令。異例の報道発表をした(飯島町提供)

◆運動場の工作物に石綿

問題になっているのは、2028年10月に長野県で開催される信州やまなみ国民スポーツ大会「国スポ」のホッケー会場(サブ会場)整備のため、町が7月に町内の3社で構成する下平・野村・久保田特定建設工事共同企業体(下平建設・野村建設・久保田組のJV)に一般競争入札を経て4億4330万円(税込)で発注した「柏木運動場整備事業」。

事業では人工芝の運動場(人工芝・採石舗装あわせ1万500平方メートル)と駐車場・ヘリポート(アスファルト・コンクリート舗装あわせ5100平方メートル)の整備を予定。7月から2026年7月末までに施工する計画だ。

その際、現在の運動場に設置されている倉庫やベンチシェルターなど5つの工作物と地下構造物の解体・撤去が必要とされたが、その石綿対策に不備があったのだという。

12月17日の町発表によれば、上記の3社JVが委託した石綿調査で「器具庫、倉庫、ベンチシェルター、シュートボードに石綿含有建材があることが判明した」という。

町教育委員会に確認したところ、外壁と内装に石綿を含む仕上塗材が使用されていたほか、非耐力壁・間仕切り壁・スコアボードに同じく石綿を含む押し出し成形セメント板があり、そのほかブロック壁の間に施工されたモルタルからも石綿を検出した。

県によれば、検出されたのはいずれもクリソタイル(白石綿)。仕上塗材(主材か下地材か不明)からは目視定量で0.1%超~5%、押し出し成形セメント板からは同5%超~50%、ブロック壁のモルタルからは同0.1%超~5%の検出だった。

それら工作物は石綿調査結果を報告する制度の基準未満(解体で80平方メートル以上)だったそうだが、10月15日付けで県に報告されていたという。

これらは石綿調査をおこたりがちな箇所であり、事前調査結果の報告についても、本当は規制対象なのに基準ギリギリの79平方メートルと偽って報告しない事例もあるなか、規制対象外にもかかわらず実施されていたことは評価できる。

ところがその後の作業はひどいものだった。

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