◆石綿「粉じん飛散認めた」と県説明

住民保護などを目的とする大気汚染防止法(大防法)や生活環境の保全などの廃棄物処理法(廃掃法)を所管する長野県は、町の発表について報道で知り、現場立ち入りなどを開始した。

同県上伊那地域振興局環境・廃棄物対策課による立ち入り検査で、一部残っているものは養生され、石綿飛散する状態ではないことを確認したという。すでにシュートボードは撤去済み。倉庫と器具庫は上屋が解体済みで基礎だけ残っている状況だった。2つのベンチシェルターはまだ残されていた。

また同24日には元請け業者、下請けの石綿作業をした者から聞き取り調査をした。その結果、不適正作業が確認されたという。

県によれば、石綿を含む仕上塗材が施工されていたのは、器具庫と倉庫(いずれも解体済み)の軒天と天井、ブロック壁の表面、2つあるベンチシェルター(いずれも残存)の天井とブロック壁の表面(一部入口付近にコンクリートがありこの箇所も同様に施工)。石綿を含むモルタルは、これら4つの工作物でブロック壁の間に施工。押し出し成形セメント板(3メートル×60センチ)はシュートボード(解体済み)のH鋼に固定されていた。

施工計画では、天井とコンクリート部分の仕上塗材だけ隔離養生し、薬液などで湿潤しつつ電動工具で削り取ることになっていたが、県は「隔離はしてなかった」(上伊那地域振興局環境・廃棄物対策課)と認める。また事業者は石綿を含むとみられる「粉じんが飛んだということは認めた」(同)と明かす。

一方、湿潤について事業者はしたことを示す写真を撮影しており、一部実施していたと主張。作業開始時に形だけそういう撮影をする、いわゆる「記念写真」とみられ、町職員が写真も含めて未実施の報告をしていることからも、県は「粉じんが飛んでいたということは不十分だった」(同)と指摘している。また県によれば、「集じん装置付きの電動ケレンも使用していませんでした」(同)ともいう。

隔離養生がなく、十分な湿潤もないなか、集じん装置付きの電動ケレンも使用していない除去作業は、大防法の作業基準違反に該当する、外部に石綿が飛散する不適正作業だったといえよう。

県は隔離養生がなかったことなどから作業基準違反と認める。湿潤をしていなかったとの町の指摘に対しては、事業者の“記念写真”がある以上、完全に否定まではできず、県が作業時に現認できていないこともあって、作業基準違反の可能性はあるものの、立証まではできていない状況のようだ。

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