◆「技術上困難」主張し重機破砕

ブロック壁に施工された仕上塗材とブロック間のモルタルについては、除去せずに散水しつつ重機破砕してすべて石綿含有産業廃棄物として処分する計画で、実際にそうした施工がされていたという。

しかし石綿を含む建材は「技術上著しく困難なとき」を除いて、「特定建築材料を切断、破砕等することなくそのまま建築物等から取り外す」ことが大防法や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で定められている。これと違う方法で除去する場合には、規制と「同等以上の効果を有する措置」が必要になる。

事業者はこの「技術上著しく困難なとき」に該当するとの主張で、湿潤化だけすればよいと判断したらしい。

しかしこれは面倒な際にしばしば使われる不適正作業の手口で、今回も同様といわざるを得ない。

前提としてブロック表面の仕上塗材にせよ、ブロック間のモルタルにせよ、手間や時間は掛かるものの、いずれも除去は可能で「技術上困難」ではない。

施工上、そのまま石綿含有産廃として最終処分するほうが、手間が省けるとの判断はあり得ることだが、その際には「同等以上」の対策が必要になる。これを回避したいため、「技術上困難」と主張したのだろう。だが除去が技術的に可能である以上、単純に湿潤すればよいというはずはない。

よって、法違反を前提にした施工計画だったといえよう。この施工について県は、「詳細を確認中」(同)という。

また石綿を含む粉じんが養生シート上に散乱し、真空掃除機による清掃がされていなかったとの町の指摘について、県は「事業者は真空掃除機で清掃したというが、写真がなかった」(同)と話す。法で定められた“記念写真”すらない以上、業者の主張に裏付けがないといわざるを得ず、こちらも法違反の可能性がある。

いずれにせよ、少なくとも仕上塗材の除去で隔離養生をしていなかったうえ、湿潤が不十分だったなど、石綿を含む可能性のある粉じんの「飛散があることは確認できたので指導していく」(同)というのが県の見解である。

聞き取り内容などの整理中で、年明けにも指導する見通し。

12月26日、伊那労働基準監督署に聞くと、「報道は承知しておりまして、町から監督署に報告をいただいております。事実確認については、個別的な話になるので差し控え。事実確認をして安衛法や石綿則で違反が見つかれば、指導をおこなう予定です」との回答だ。

ただし一般論として、「石綿含有で(規制で定められた)養生や湿潤化、集じん機付きの工具を使った除去作業がされていないのであれば、法令違反に当たる」(同監督署)と明かす。

ブロック壁の表面に施工された仕上塗材やブロック間のモルタル除去で法令対応が「技術上困難」と事業者側が主張している件も同様に、「技術的にどうかというとできる業者はできる」(同監督署)との見解であり、やはり法違反との判断となるのではないか。今後、監督署からも少なくとも石綿則関連で指導があるとみられる。

12月26日、3社JVの代表である下平建設に取材を申し込んだが、「町とも協議しておりまして、お答えできることがない」との回答だった。

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