◆小さな町の奮闘
こうしてみると、石綿規制への違反について飯島町の指摘がおおよそ正しかったことが県の調査で裏付けられている。
公表した経過報告書の最後で町は、「現場代理人の安全に対する認識・知識が乏しいため、適切な指導や現場管理ができていない。よって監督員の指導が伝わらず、改善へつながらない」「特定建設事業者の安全作業の知識がない」と痛烈に批判している。
そもそも運動場などの小さな工作物の石綿調査は怠りがちで、適切に実施されないことが少なくない。今回、人口1万人に満たない町できちんと調査していたことには若干驚かされた。
発注したら現場に一度も足を運ばず、ほったらかしの自治体が少なくない。それどころか、法令への理解がほとんどない自治体によるずさんな発注が少なからず起き、調査結果の改ざんを求められたり、不適正作業を強いられたりしたと真面目な石綿調査者や除去業者が嘆く声が漏れ伝わってくるのが現状である。
問題が起きれば、むしろ隠ぺいに走り、石綿が見つかっても費用負担すらせずに違法施工を押しつける。そんなひどい自治体の事例ばかり聞く(民間はもっとひどいとも聞く)なか、飯島町の職員は何度も現場を訪問し、的確な指摘・指導をしてきた。
石綿規制をかなり理解して履行状況まできちんと現場で確認している発注自治体は、全国的にも相当珍しいのではないか。ましてこれほど規模の小さい自治体による活動であることには驚かされた。立ち会い2日目に予定時刻より1時間半余り早く現場を訪問するところなど、偶然でなければ、見事な対応ぶりである。今回の飯島町の奮闘ぶりからは、現場立ち入りなどをしていない自治体など発注者が学ぶべきことが多い。もっとも工事が適切に施工されていることの確認のため監督・検査することは、自治体にとって地方自治法(第234条の2)の義務であり、本来的には当然のことである。
町教委に12月22日に確認したところ、事業者側からその後も質問書への回答はなく、土壌調査の結果も知らされていないという。町でも土壌の石綿調査を実施する予定としている。
この間示したように、作業内容からは石綿粉じんの飛散があったとみられ、現場の土壌表層に散乱していることが想定される。今後は土壌調査の結果をふまえて、表層土壌の撤去なども必要になる可能性がある。
懸念されるのは、土壌の石綿調査の難易度が高いことである。適当に採取すればよいわけではなく、作業場所から飛散したであろう箇所を関係者の聞き取りや当日の風向・風速、その後の風雨の影響などさまざまな条件を考慮して汚染範囲を特定しなければならず、綿密な計画のうえで調査することが必要になる。ところがこうした調査については規制どころか、マニュアルすらないのが現状だ。細かくは触れないが、分析法の選定や土壌をどこまで調査するかも重要である。
土壌対策後に再び残存物について、徹底した石綿対策のうえで除去などをする必要がある。その実施には住民の理解が欠かせない。
年末、町教委は石綿ばく露を懸念する住民の対応に追われているようすだった。作業状況や風向・風速、距離、そして時間によってばく露量は変わるため、厳密には飛散実験などをふまえて考察しなければはっきりしたことはいえない。しかし町が公表している写真や現場配置などからは、住民らが高濃度に石綿ばく露するような状況ではなかったのではないかというのが筆者の感想だ。場合によっては低濃度のばく露すらほとんどないかもしれない。
しかし住民の要望が多ければ、町は低濃度ばく露について知見や経験を持つ有識者による健康リスク評価を考えてもよいのではないか。町が取り組むべき課題は山積みだが、ぜひこれまでのように住民目線を持ち続けながら対応してほしい。
【関連写真】飯島町の工作物解体で「アスベストが飛散」した現場のようす











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