建設労働に動員された女性たち。人民班で招集されたものと見られる。2025年9月、恵山市を中国側から撮影(アジアプレス)

北朝鮮には人民班という住民統制組織がある。最末端の行政組織のことで、地区ごとに20~50世帯程で構成され、地区内の清掃や道路補修、堆肥作りなどへの動員を組織し、洞事務所(町役場に相当)を通じて中央政府の方針や指示を伝達すると同時に、住民一人ひとりの動向を細部まで把握・監視する役割を担う。最近、この人民班による住民統制が以前にも増して厳しくなっているという。両江道(リャンガンド)に住む取材協力者に、その「うんざりぶり」について聞いた。(石丸次郎/カン・ジウォン

◆2日に1度家に入って来て検査

――人民班を通じた統制が強化されたそうですね。

最近、人民班が管理する世帯数を従来の30~50世帯程度から20世帯に縮小したんです。統制しやすいからです。いろんな口実で、人民班長らが二日に一度は家に入ってきます。放送検閲、電気検閲、上水道の調査、インフルエンザ検査、予防接種、衛生検閲など、しょっちゅうです。住民たち一人ひとりの動向は手の平を見るように掌握されています。

何か目につくことがあると、「通報があったので調べる」として、安全局(警察)から人が来ます。その調査を止めてやると、(人民班長は)賄賂を要求します。

※放送検閲 北朝鮮の全家庭には「3放送」という宣伝用の有線放送が設置されている。それを切ったり改造したりしていないかの検査。

※電気検閲 節電のため電化製品を規定以上に使用していないかの検査。

※上水道の検査 水道の水質が悪いため臭いや雑菌などの検査が多い。

恵山市の人民班警備哨所。「江安26哨所」とある。「人民班事業を強化しよう!」というスローガンが掲げられている。2025年9月、中国側から撮影(アジアプレス)

◆詰め所で外出と帰宅までチェック

――人の出入りも監督されているそうですね。

人民班の入り口には「警備哨所」と呼ばれる詰め所が設置されていて、出入りする人はすべて身分を明かして名前を記入しなければなりません。住民が出勤などで外出する時も、帰宅する時も記入します。質問されて答えないと問題になります。

「警備哨所」は、住民を24時間3交代で詰めさせます。人民班への人の出入り厳格にチェックしていますが、それでも、もし犯罪や事故が発生すれば人民班全員で責任を取らなければなりません。

 

――最近、特に厳格なのは何ですか?

食糧や物資の取り締まりですね。個人が食糧や大量の物資を買い込むと、報告されて調査を受けます。先日私の人民班で、ある会社からコメ30キロを買って家に運び入れようとした人が「警備哨所」で引っかかり、安全局がそのコメの出所を調査しました。鬱陶しくて息が詰まります。うんざりです。

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