
「2025年を保健革命の元年とする」。金正恩氏は2025年2月、こう宣言した。平壌だけでなく地方にも現代的な医療保健施設を建設せよという号令である。建設計画が明らかになっているのは、大型の平壌総合病院、亀城(キソン)市病院、平壌市の江東(カンドン)郡病院であるが、他の地方でも続々医療施設のリニューアル工事が行われていることがわかった。「保険革命」の実態はどうなのか? 咸鏡北道(ハムギョンブクト)の取材協力者に地元の状況について調べてもらった。(石丸次郎/カン・ジウォン)
◆手術用メスもまともにない地方病院
この取材協力者A氏が住むのは、咸鏡北道の茂山(ムサン)郡。北朝鮮最大の鉄鉱山がある中国との国境都市である。人口は推定10万人程だ。
――茂山郡でも医療施設の刷新は行われていますか?
昨年秋から医療保健分野を現代化せよと中央政府が指示し、茂山郡病院を現代的に建設しなおせと言うことになりました。既存の建物を改修して、入院室、診察室、検査室などを作り直したんです。問題は、医療設備がまともに入って来ないこと。実際に病院の中に入ってみる、まともなベッド一つありませんでした。
――平壌では立派な総合病院が竣工したと盛んに宣伝しています。
平壌や三池淵(サムジヨン)のような場所には、新義州(シニジュ)や南浦(ナムポ)から輸入された中国の良い医療設備がたくさん搬入されたそうですね。でも地方にはお金がない。茂山郡病院に入って来たのは、中国製の中古のX線撮影機が全てです。
その中古のX線機械も、定格電圧ではない不安定な電圧で使用したため、わずか1カ月で故障してしまい、実際には使えないと聞きました。
――茂山には他に病院がありますか?
茂山鉱山にも鉱山病院がありますが、医療設備はさらに貧弱で、手術用メスさえまともにありません。他に地区ごとに小さな診療所があります。

◆資金なく幹部や富裕層に資金出させる
――地方はなぜ金がないのですか?
政府が金を出さないから。(労働)党では、トンチュ(金主の意 新興富裕層)らに対して資金を出させ、設備資材を献上するよう要求しています。郡病院の内部工事にも資材や金を出した者がいます。大半は幹部や貿易業者で、1000万ウォン程度は出していますね。中には何億ウォンも出した者もいます。
※1万北朝鮮ウォンは日本円で約45円。一般労働者の労賃は約3万~5万ウォン程度。
――医療サービスは今も無償なのですか?
違います。国営企業や労賃を受け取る単位(組織)に所属する労働者に対する社会保険制度に変わりました。労働者は診察費として2000ウォンを支払います。一般人は5000ウォンです。郡病院で診療を受けるためには、鉱山病院や地区の診療所で発行された診察許可証を持参しなければなりません。
金正恩政権は昨今、地方における工場や住宅の建設を盛んに宣伝している。官営メディアには、それらの立派な外観の写真が連日のように掲載される。だが、重要なのは見栄えではなく施設の実用性であることは言うまでもない。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。











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