
<北朝鮮内部>中国との大規模車両密輸、その構造と目的を探る(1) 「国家密輸」の拠点は恵山 タクシーやレンタカー事業で各地に需要
最近、鴨緑江上流の朝中国境がただならぬ様相を呈している。両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市は学校の運動場にまで中国製の密輸車両があふれ、鴨緑江の中州は巨大な密輸拠点へと変貌している。なぜ北朝鮮政府は今、このような大規模な車両密輸を主導しているのか。背景には、危機的だった車両不足と、財政難を乗り切るための「個人車両所有の解禁」という二つの要因がある。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
◆ 8年間の車両導入危機 今需要が一気に噴出
北朝鮮経済はこの8年間、国連安保理による強力な制裁と、コロナ禍による国境封鎖という二重の打撃を受けてきた。車両はもちろん、エンジンや部品といった関連する装備、資材も公式輸入はすべて止まっていた。
その結果、既存の車両を修理することもままならず、老朽化が進んだ。軍や党、行政などの国家機関、工場や物流、建設に必須な産業用車両の不足が深刻化し、国家運営にも支障が生じかねない状況に陥っていた。
コロナ・パンデミックが収束し交易が再開されたものの、状況は依然として厳しかった。中国当局が制裁順守を理由に、車両や部品の輸出に応じなかったからだ。密輸についても、今年初めまで、関係する業者を摘発したり、賄賂を受け取った国境警備隊(辺防隊)の幹部を処分したりするなど、取り締まりを強めていた。
しかし、下半期に入り状況は変わった。朝中関係が改善し、中国側の黙認のもとで車両の密輸が急増し始めたのだ。

◆ 個人車両所有解禁の理由は何か
しかし、車両密輸には十分な資金が必要だ。これに関連して重要なのが、北朝鮮当局の政策転換だ。金正恩政権は、北朝鮮政権樹立以来約80年間禁じられてきた個人車両の所有を、今年に入り突如として認めた。個人も希望すれば自分の車を購入して使用できるようになったのだ。
注目すべきは、車両が流通する構造だ。車両の輸入と販売は国家の管理下にある。これまでアジアプレスが把握したところでは、対外経済省などが国家密輸で車両を持ち込み、これを各機関、企業や購買力のある個人に転売する構造である。
両江道(リャンガンド)の取材協力者は、11月中旬に次のように伝えてきた。
「個人が3〜5人で資金を出し合って車を購入し、必要なときに交代で使う例もある。そのため最近、自動車運転免許を取得しようとする人が増えている」
つまり、国家が独占的な輸入販売者となり、個人が合法的な購入者となる新たな構造が形成されたのだ。
国家が金科玉条のように守ってきた「車の個人所有不可」という社会主義の原則を破ってまで、個人に車を販売する理由とは一体何か。












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