
北朝鮮当局は今年に入り、長らくタブーであった自動車の個人所有を許可した。目が利く「トンチュ」(金主の意、新興富裕層)らは、この機を逃さず、密輸車の活用と販売に乗り出した。昨年後半から今年11月までに、北朝鮮内部の協力者から寄せられた報告に基づき、「トンチュ」が主導する車両ビジネスの実態の分析を試みた。(チョン・ソンジュン/カン・ジウォン)
<北朝鮮内部>中国との大規模車両密輸、その構造と目的を探る(1) 「国家密輸」の拠点は恵山 タクシーやレンタカー事業で各地に需要
◆国家密輸に介入する「トンチュ」たち
「トンチュ」たちが真っ先に目を付けたのは、密輸される車両を国内で供給する際の差額・マージンである。車両は必要だが支払い資金が大いに不足する国は、「トンチュ」の資金に頼った。軍や政府機関など公共部門で更新必須の車両を除けば、車両密輸の実質的な原動力は、「トンチュ」の「民間資金」であった。
今年10月中旬、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の取材協力者は車両密輸の実態を調査し、次のように伝えてきた。
「(車両密輸を)個人が直接することはない。『トンチュ』が貿易会社と結託し、購入資金を出して持ち込んで売っている。(密輸)車両の販売価格は15万元から、高いものは50万元以上する。人気があるのは10万元台のBYD中古車だ」
※1万元は約22万円
中国の中古車取引サイトと単純比較しても、北朝鮮国内の取引価格と比べ、1台当たり数万元の差益が見込める。しかし、この商売に参入できるのは、資金力と人脈面で優位に立っている「上級トンチュ」に限られる。

◆密輸中古車を分解し部品化して商売
興味深いのは、「トンチュ」が利益を上げる方法が、時期によって異なる点だ。
「トンチュ」らが国家による車両密輸の過程に参入した初期、最も儲かったのは部品商売だった。両江道の取材協力者は2024年10月、古い中古車を密輸した後、分解して部品として売るという特異なビジネスについて伝えてきた。
「8月に(平安南道)平城(ピョンソン)のある『トンチュ』が、密輸された中国の『BYD』の中古トラックを分解して、部品を売って大金を稼いだそうだ。平城市食糧品工場の名義でトラックを購入したが、実際には廃車にして部品を売ったのだ」
1997年の安保理制裁の強化と、コロナ・パンデミックによる国境封鎖期間中に部品供給が途絶え、動かなくなった車両が多いのに目をつけ、中国から廃車寸前の中古車両を安値で購入したという。国際経済から孤立した北朝鮮の特殊な状況下で生まれたビジネスだと見ることができる。

◆「ナンバープレートすり替え」の手法
2025年に入り、密輸中古車の販売が徐々に増える中、新たな金儲けの手法が生まれたとの報告があった。国家統制を巧妙に回避する「ナンバープレートすり替え」である。
4月、恵山市の協力者は、その手法について詳しく説明した。
「国境に通じる10号哨所(保衛部哨所)や安全局などに賄賂を渡し、(既に登録済みの)古い車のナンバープレートだけを準備し、新しい密輸車に取り付けてる方式だ。古い車は自ら処分し、代わりに新車が運行されることになる」
「トンチュ」らは、この手法で車1台につき3万元ほど稼いでいたそうだが、不正が発覚してしまう。国境の検問所が通行証を検査した際、その車の運行記録がないことが問題となったという。事前に賄賂を渡して検問所を通過する時間をすり合わせたのに、タイミングが合わなかったので発覚したのだという。












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