◆「この建物は2つの大戦を見つめ、いま3つめの“大戦”を目撃しています」

オデーサの旧い街並みに佇むUNIONの建物は、1902年に建てられた。2つの大戦、ロシア革命とソビエト時代、そして独立ウクライナ。激動の123年だった。

「この建物は、第1次大戦、第2次大戦を見つめてきました。いまは3つめ、”第3次大戦”を目撃しています。過去の大戦でも生き残った建物です。きっとこの戦争でも、持ちこたえてくれると信じています」

オクスさんは、ジョーク交じりに笑った。何事にも陽気なオデーサっ子の気質なのだという。

円形の窓枠は、1902年の建設当時のものがそのまま残る。ソ連時代は鉄道労働者の慰労会館だった。世紀をまたいでウクライナの激動の歴史を見つめてきた。(2023年5月・オデーサ・撮影・玉本英子)
未明にオデーサに飛来した自爆攻撃ドローン「シャヘド」(ロシア名・ゲラン)が、防空部隊の対空砲撃で撃墜される様子。戦争と隣り合わせの「日常」だ。(2025年6月・オデーサ・撮影・玉本英子)

連日、市内には防空警報のサイレンが鳴り響き、夜には自爆ドローンが飛来する。そんな「日常」が続くウクライナ。
「ミサイルに怯える毎日。落ち込んだり、悲しんだりするのはあたり前です。この場所をアートや文化の交差点にして、人びとが豊かな心を取り戻せるようになればと願っています」
オクスさんは、そう意気込んだ。

2023年、ユネスコ世界遺産に登録された「オデーサ歴史地区」。危機遺産にも指定された。歴史地区の中心部にあるウクライナ正教会の救世主顕栄大聖堂は、2023年7月、ロシア軍のミサイル攻撃で一部が損壊。歴史・文化遺産もまた戦火にさらされている。(2024年2月・オデーサ・撮影・玉本英子)
窓をベニヤ板で覆ったオデーサ西洋東洋美術館。所蔵品の一部をベルリンの美術館に「疎開」させた。(2024年4月・オデーサ・撮影・玉本英子)
ウクライナ南部オデーサ。ミサイルや自爆攻撃ドローンの脅威にさらされている。地図は2025年11月下旬時点の状況。(地図作成・アジアプレス)

 

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