
◆戦禍のアーティストの表現拠点に
ロシア軍の侵攻は、ウクライナの芸術もまた危機にさらした。アーティストたちは、戦禍のなかで苦闘しながらも創作活動を続ける。2年前、オデーサに開館した新たなアート・イベントスペースが、アーティストたちに表現の場を提供し、芸術を支えている。連続企画「ウクライナ・アートの現場」第4回。(取材・写真:玉本英子・アジアプレス)

◆オデーサ歴史地区にも迫りくるミサイルと自爆ドローン
ウクライナ南部オデーサ。黒海に面した港湾都市に広がる美しい街並み。かつては、国内外からの観光客でにぎわった。侵攻後、この町もまたミサイル攻撃にさらされ続けている。有名なポチョムキン階段の頂部に建つリシュリュー公記念碑は、土のうで覆われている。爆撃から守るためだ。窓を防護するための分厚いベニヤ板が張り付けられたオデーサ西洋東洋美術館は、ドイツ政府の協力を得て、所蔵品の一部をベルリンの美術館に「疎開」させた。芸術作品もまた、戦争の被害を受けている。
戦禍はアーティストたちの創作活動にも深刻な影響を与えた。南東部の町がロシア軍に占領され、生活と活動の場を失った者も少なくない。侵攻後に閉じたギャラリーもある。なにより戦争は彼らの心にも深い傷を負わせた。


◆「戦争になるとアートは置き去りに」
オデーサ中心部にあるカルチャースペース・UNION(ユニオン)は、こうしたアーティストたちに表現の場を提供している。
UNIONを運営するディレクターのイホール・オクスさん(45)は話す。
「戦争になると、アートや文化は後回しになり、置き去りにされる。アーティストたちの表現活動も委縮する。こんな状況で苦悶する彼らが、少しでも希望を持てるようにしたい。芸術は無限です。その力を感じてほしい」

司会やエンターティナーとして、オデーサのカルチャーシーンで活躍してきた彼は、アート、文化の情報拠点づくりを構想。侵攻で資金集めは難航したが、民間企業や有志からの出資も得て、2023年、UNIONの開設へとこぎつけた。
3つのギャラリーに絵画や彫刻が並ぶ。コンセプトは「ウクライナと世界の芸術を発見する」。このほか地元オデーサのアーティストをフィーチャーした作品も展示。オデーサの風景や街並みを描いた作品に加え、生まれ育った町が戦火で痛めつけられていることへの悲しみを込めた絵も並ぶ。


UNIONは様々なテーマの企画にも取り組む。イベントスペースでは、ジャズ、クラシックなどの演奏会のほか、フォーラム「ウクライナにおける平和構築への道」や、映画「マリウポリの20日間」(監督:ミスティスラフ・チェルノフ)なども上映され、来場者どうしが思いを語り合う場ともなった。これまでに企画された展示は50以上、来場者はのべ3万人を超えた。
オデーサにとどまって創作を続ける画家、イリーナ・スシェルニツカさんの作品もUNIONに展示されている。彼女は言う。
「戦争でアーティストの活動が縮小したなか、こうした創作表現の場が確保されていることは意義がある」












![<北朝鮮>[写真・動画]栄養失調で衰弱する人民軍兵士「激やせ」で動けぬ者も <北朝鮮>[写真・動画]栄養失調で衰弱する人民軍兵士「激やせ」で動けぬ者も](https://www.asiapress.org/apn/wp-content/uploads/2011/09/20130807-nk011k.jpg)












