◆敷地境界基準の最大600倍の事例も

石綿でも実例を示そう。

少々古いデータだが、1988年の米国胸部学会で報告された基準内(1%以下)の石綿を含む「遊び砂」から石綿が容易に吸入性粒子になることを指摘したものだ。

発表の要約によれば、「市販の子供用遊び砂を砂場に投入すると、煙のような微細な粉塵が濃く放出された」ため、未処理の砂1グラム(ろ過水に懸濁し、振とう後、5分間静置)の上澄み液を走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分光法(EDS)で測定した結果、元の砂1グラムあたり、長さ(5μm以上)、高アスペクト比(10:1以上)のトレモライト石綿繊維が約10万~100万本含まれていることが明らかになった」というのだ。

さらに91リットルの容量のグローブボックス内で模擬的な飛散実験を実施。約1カップ(200グラム)の砂を10センチの高さから1分間に1~2回、静かにふるいにかけた。その際、空気測定用のフィルターを設置してポンプで空気を引き込みサンプリングし分析し、位相差顕微鏡(PCM)と走査型電子顕微鏡(SEM/EDS)で計測した。

その結果、PCMで最大1ミリリットルあたり17本の石綿を含む可能性のある繊維を検出。SEMで石綿繊維を同定し、同1~6本を検出した。

日本ではトレモライトなど角閃石系石綿のばく露限界値を定めていない(削除した)ため、無理矢理クリソタイル(白石綿)の基準(同150本)と比較するが、それを超える濃度であり、労働ばく露レベルということになる。

日本では石綿について一般環境中の基準は存在しない。ただし1989年に工場敷地境界の基準として定められた空気1リットルあたり10本という基準がある。(かなり緩い基準のため、本来比較すべきではないが)これと単純比較すると、上記のグローブボックス内の測定値は空気1リットルあたり1000~6000本であり、基準の100~600倍に達することになる。

ちなみに敷地境界基準は工場などの隣に住民が住んでいるような環境は想定しておらず、数十メートルの緩衝地帯があって、それによって10~100分の1に濃度が減衰するだろうとして設定されたことを2012年の環境省・石綿飛散防止専門委員会で当時を知る専門家が証言。現在なら基準ははるかに厳しくなるはずである。

欧州連合(EU)における現在の労働ばく露の基準値は同10本(8時間加重平均)であり、それと比べると、相当高濃度といえよう。

とはいえ、模擬実験は閉鎖空間で実施され、含有率についても現在日本で流通しているものと同じかどうかは不明であり、測定データを直接比較はできない。しかし「基準内なら飛散しない」わけではないこと、実際に石綿飛散があり得ることは少なくともご理解いただけたのではないか。

こうした事例から、筆者は石綿飛散・ばく露があり得ると指摘しているのである。

そして、「危険性が低い」との根拠のない主張も許しがたい。そもそも模擬実験では労働者のばく露基準すら超える濃度だったことを忘れてはならない。閉鎖空間でなかったとしても、十分労働者並みの石綿ばく露の可能性がある。

そもそも日本における重量の0.1%という基準は、2005年当時の1%基準の時期にそれ以下の石綿を使用する製品が存在することが指摘されるなどした結果、桁を1つ下げたと聞く。国の説明では「0.1%以下の石綿を意図的に入れる製品は存在しない」ことが理由とされる。つまり、健康リスクから定めたものではないのだ。

環境ばく露被害とみられる中皮腫患者から、「危険性は低いとか低リスクっておかしいですよね。たとえば10万分の1だから低リスクっていうけど、被害に遭った私たちにとっては1分の1で、100%なんです」と言われてはっとしたことがある。

すでに述べたように石綿の発がんリスクについては、この量までなら大丈夫との「しきい値」が確認されておらず、少量のばく露でも中皮腫などを発症するおそれがあるという。しかも日本における石綿規制は「国際的に40年遅れ」であり、規制の緩さゆえに住民らの石綿ばく露も多いといわれる。だからこそ、不適正な解体工事などによって、「これ以上追加の石綿ばく露はすべきではない」と指摘する専門家もいる。

今回のカラーサンドへの石綿含有は、そうした被害を出しかねない重大な問題であることを事業者は理解する必要がある。あるいはカラーサンドのばく露が少量だったとしても、それが最後のひと押しになって健康被害を生じさせる可能性もあろう。

単に定量分析して、仮に基準内だったとしても、そのまま流通させるなど子ども向けかつ発じんの可能性がある製品としてあってはならないというのが筆者の見解だ。石綿ばく露は年齢が低い時期から始まるほど、将来の発がんリスクが上昇するとされる。定量分析に無駄な時間を浪費せず、石綿検出が明らかになった時点で、自主回収に舵を切るべきだ。

【関連資料】独自調査したカラーサンドなどのアスベスト分析結果詳細や顕微鏡写真

 

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