◆農場は国家と農民の間で苦しい立場に
―― 農場員の反発は強いと思うが、農場側はどのような立場なのか。
協力者A:農場員が現金ではなく食糧を求めているため、農場としても頭を悩ませている。そこで、トウモロコシなどの主穀は国家に渡すとしても、それ以外の非穀物(豆、ゴマ、唐辛子など)については、「副食物」や「優遇穀」という名目で、できる限り現物で農場員に配ろうと努めている。
協力者B:農場が、地方工場で生産される味噌やパン、生活必需品などを現物で受け取り、それを超過生産分から共同で返済する方式も試みられている。農場員にとっても、いずれにせよ購入しなければならないものだから、そのやり方をある程度受け入れる雰囲気になっている。
最近、北朝鮮当局が地方工場で生産された滞貨商品(在庫)を、農村に設置された国営商店へ送り、農場員に事実上、押し売りをしているとの現地報告もあり、今後さらに詳しい調査が必要だ。

◆農民の不満は「生存型」から「利益型」へと質的に変化
2025年秋の分配現場における最大の対立は、「分配があるかないか」ではなく、「分配の方法」だった。基本分配がある程度保障される状況の中で、超過生産分をめぐり、国家と農民の間で利益をめぐるせめぎ合いが起きていたわけだ。
国家は食糧流通の独占を維持するため、超過分を現金で強制的に買い上げようとしており、その結果、インフレによる不利益が農民にしわ寄せしてる。一方、農民側は、継続的な貨幣価値の下落による損失を避けるため、現物での支給を求めているのである。
これは大きな変化だ。過去に北朝鮮農民の不満が「今すぐ食べる食糧が足りない」という生存の危機に起因していたとすれば、今年の不満は「自分の努力の対価を、正当な価値(現物)で補償してほしい」という、利益の最大化という観点から噴出しているからだ。また、こうした農場員の不満を素早く察知し、対応しようとする農場側の動きも、過去の官僚主義的な農場運営の態度からは見られなかった変化だといえる。
次回は、国家が農民の反発をあえて受け入れてまで維持しようとしている、国家主導の食糧管理システムとは何なのか、そしてそれがどのように機能しているのかについて検証する。(続く3へ >>)
※写真は全て2025年9月に平安北道朔州郡を中国側から撮影。
※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
























