
◆国家計画を達成... 企業との「契約収買」も95%
農民に割り当てられる分配量が増加したという事実は、国家が最優先とする「義務収買」と、それに次ぐ「契約収買」が、一定程度達成されたことを意味する。2024年に改正された北朝鮮農業法では、農場員への分配は、計画が完遂された後にのみ実施できると明記されている。
「義務収買」とは、国家が農業生産のために農場へ提供した土地、灌漑用水、電力および営農資材の利用に対する経費名目として、秋の生産量の中から国家が差し引く食糧だ。その量は国定価格に基づいて決められる国家計画である。こうして確保された食糧は、軍隊や公務員、社会保障対象者などへの配給に充てられる。
「契約収買」とは、農場が周辺の工場や企業に食糧を供給するための契約に基づく買い上げで、総生産量から「義務収買」」と農場分配を考慮したうえで計画として定められる。これは、企業に所属する労働者への配給に活用される。
実際に、計画遂行に対する現地の前向きな評価について、A氏は次のように語っている。
「国家計画量(義務収買)を達成できなかったという話はなく、農場ごとに企業と契約した食糧(契約収買)をきちんと送ったかどうかに関心が集まっている。正確な数字は分からないが、95%程度は遂行されたとみている。これは一般の農場員の話だ」
アジアプレスの調査で、これまで法令条文や文書上でしか確認できなかった「契約収買」制度が、実際に運用されたことが確認できたのはこれが初めてだ。
B氏もまた、「契約収買」による供給方式が実際に機能していることを確認した。
「企業は農場と直接取引(契約収買)を行い、計画分の食糧を受け取っているが、糧政局が指定した数量のみを持ち出せるよう厳格に管理されており、農場の裁量はほとんどない」
そのうえでB氏は、農場が企業に直接食糧を引き渡す仕組みは、中間での目減りが少なく、労働者に直接供給される点で望ましいと評価した。国家や企業が農場から買い上げる食糧の価格については、次回で詳しく取り上げる。
◆「個人耕作許されたらいいが…それでもましになった」と評価も
農民たちは依然として小土地の耕作禁止に不満が強いが、成果に応じた分配が行われる現在の方式が、過去の協同農場時代よりも効率的である点については認めている様子だ。
B氏は、新たな制度に対する農場員の反応を次のように伝えた。
「個人の小土地を認めてくれればいいのだが、それは難しい。過去の農業方式よりは今の方がましだと(農場員らは)言っているが、農場員が骨身を削って働かなければ得るものがない仕組みだ。(現行制度が定着するにつれ)自分の分組の土地に、少しでも多く肥料をまくという意識も生まれてきている。」
調査した農場に限った話ではあるが、昨秋の農場員への分配状を見る限り、金正恩政権の農業改編政策の「成績表」は、悪くないように見える。農場員の平均分配量が増加した点もプラスだが、インセンティブが実際に機能していることが確認され、政策の持続可能性があると評価できよう。
しかし、こうした成果の裏側で、農民と国家の間に新たな対立の芽が生じていると、取材協力者たち報告している。その対立とは一体どのようなものなのか。その原因は何なのか。次回で検討する。(続く 2へ >>)
※写真は全て2025年9月に平安北道朔州郡を中国側から撮影。
※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。























