◆法違反「件数」すら“忘却”
これまで約20年間、鉄道各社では同様の安衛法違反が繰り返されてきた。2025年9月末にもJR九州が2024年にネットオークションで販売した中古車量部品2つに石綿が含まれていたと発表している。
筆者はかねて同様事例が延々と繰り返されている実態から書類送検して、起訴、罰則適用まできちんとすべきと指摘してきた。
ずさんな石綿対策により法違反を繰り返す鉄道会社のいわば象徴的な存在がJR東日本である。
じつは同社では2007年、2013年、2016年にも同じ第55条違反が確認されているからだ。同条項の違反以外にも、たとえば2016年には北陸新幹線の防音壁約2万枚(約1800トン)に基準超の石綿が含まれていたにもかかわらず、普通の産業廃棄物として破砕処理させていた廃棄物処理法の委託基準違反(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)もある。いずれもこれまで送検まではされず、指導が繰り返されてきた。その結果が、今回の4度目の第55条違反である。同監督署は繰り返し違反していることを重視して書類送検した。当然の措置といえよう。
送検後、同社は「これまでの対策が一過性のものであり、体系的な教育の実施や業務の仕組みの構築に至っていなかったことに原因がある」と初めて十分な体制整備がされてこなかった事実を認めた。
ところが同社に過去の安衛法第55条違反を挙げてもらったところ、次の2件しか示されなかった。
〇2016年11月 郡山総合車両センターにおいて、グループ会社社員が、205系の台車に使用している心皿ブッシュの交換作業を実施している際、心皿ブッシュの破損箇所から石綿らしきものが見えているのを認めた。メーカーに確認したところ、当該の心皿ブッシュには石綿が含まれていることが判明
〇2013年8月 長野総合車両センターにおいて、廃車解体工事から発生した鋼材を資源として売却をした際、鋼材の一部に石綿含有の防錆塗料(アンダーシール)が付着していたことが資材購入者より申告
同社によれば、今回含めて計3回との見解だ。他メディアにも同様に回答している。
だが実際には、すでに述べたように計4回である。
同社の回答では抜けていたが、2007年5月、鉄道事業者のじつに計32社が2006年9月以降、禁止された重量の0.1%を超える石綿を含むガスケットなど計1万1088個を新たに使用した安衛法第55条違反を厚生労働省が発表しており、このうち1社がJR東日本なのだ。
安衛法「最高刑」の法違反を4度も繰り返したあげく、送検されるにいたっても自社による同様の法違反の件数すら“忘れてしまう”同社の危機意識の低さが浮き彫りになった。
さらに同社は今回の法違反や書類送検について同社ウェブサイトでは「あえて」発表していない。同社によれば、「必要な関係者には適切な情報提供がなされている」(同)ことなどから判断したというが、その結果、違反件数さえ正確に答えられないのでは本末転倒であろう。
2006年以降、石綿の製造などを禁ずる安衛法第55条違反によって起訴、判決まで出た事例はない。だからこそ同様の違反が延々と繰り返されてきた。指導が繰り返されるだけでその先はない。そんな認識を今回の送検は覆した。だが、形式的な送検に抑止効果がないことは明白だ。送検されても自らの法違反の件数すら忘れ、同社ウェブサイトにも意図的に載せないJR東日本の“反省”を許すのか。長野地検の捜査のゆくえが注目される。























