◆“素人”調査継続で見落とし次々
市は前出・報告書の最後に〈本事案は、本市発注工事の施工過程で発生した事故であることの重大性を深く受け止め、市有建築物に携わる職員が常にアスベストの危険性と法令順守に関する認識を持ちながら、適切な判断のもと、作業手順の遵守が行えるようスキル向上への取り組みを継続する〉と記載した。
しかし継続的に法令遵守に取り組むといっているにすぎず、再発防止が十分とは言い難い。市が開催してきたこれまでの懇話会では健康リスク評価だけが検討され、再発防止のあり方は議論されてこなかった。
この違法工事がきっかけで市が立ち上げた市アスベスト対策推進本部会議(現アスベスト対策推進庁内委員会)でも、再発防止の徹底が十分議論されているとは言い難い。「堺市アスベスト対策取組方針(2024年1月改定)」や「堺市公共建築物等におけるアスベスト含有建材点検・管理マニュアル(2023年1月)」は示されているものの、きわめて重大な欠点がある。
それは使用中の建物における石綿の調査・管理を石綿調査について講習を修了していない“素人”の施設管理者が担っていることだ。
筆者は被害者団体と市の話し合いに参加した際、建築局長に「まず間違いなく吹き付け石綿に見落としがあるから専門家による再調査をすべき」と指摘したことがある。
即座に担当課長が「すべて把握済みで必要ない」と反論。筆者は「“素人”調査で本当にすべて把握できているのか」と追及したが、市側は「問題ない」と豪語した。
ところが2021年に公園施設や小学校4校で相次いでこれまで見落としていた吹き付け石綿が見つかった。その後に市が実施した再調査で、さらに旧幼稚園や学校など9施設から吹き付け石綿の見落としが明らかになった。
再調査は一部、市の特定建築物石綿含有調査者が調査した箇所もあるが、基本はいずれも“素人”調査である(市の調査者が事前に調査のポイントを説明)。
結局、再発防止でもっとも重要な石綿の把握と管理が“素人”任せの現状は変わらない。
もともと一連の堺市で問題になってきたような、吹き付け石綿などの見落としを防ぐために2013年7月につくられたのが国土交通省の「建築物石綿含有建材調査者(現在の「特定」調査者)」講習制度である。「建築物の通常の使用状態」において、石綿含有建材を「的確かつ効率的に把握するため、中立かつ公正に正確な調査を行うことができる」調査者の育成を図ると当時発表されている。
市でも事故後、調査者(現在の特定調査者)を積極的に取得したが、結局、有資格者による吹き付け石綿の再調査はされないまま捨て置かれた。その結果、設備工事の際などに、これまで見落とされていた吹き付け石綿がたまたま見つかることが相次ぐことになった経緯がある。























