自衛隊の内部文書から明らかになった、自衛隊の情報保全隊すなわち防諜部隊による国民・市民監視活動の実態は、もしも「スパイ防止法」が制定されたら政府による国民監視体制が一層強まることを予期させるものだ。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)
◆全国各地での監視・情報収集の記録
陸上自衛隊の東北方面情報保全隊(現在は自衛隊情報保全隊の東北情報保全隊)が2004年1月7日~2月25日、青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島の東北6県において監視・情報収集した記録文書「情報資料について(通知)」(一部、03年12月の分も含む)のなかに、監視対象として「事前情報に基づくイラクへの自衛隊派兵反対昼デモ」と記されていた。
この「事前情報」とは何を指すのか。同文書には、「国内勢力の今後の取組予定」という項目があり、「集会・デモ」の名称、主催団体、日時、場所、参加人員の記載がある。「参加人員」の欄には「約200名(申請)」と記されたケースもある。
おそらく主催団体がデモのために警察に申請した道路使用許可申請書の記載情報を、「事前情報」として公安警察などから得ていたのだろう。自衛隊と警察の連携がうかがえる。そして記録の総括として、次のように書かれている。なお「P系」とは共産党系の団体を表す暗号である。

「これらの取組のほとんどは、自衛隊のイラク派遣に反対する宣伝活動であり、青森、岩手、宮城、及び福島の各県内では成人式の場に絡めた主に新成人者の獲得を企図したものと思われるP系の宣伝活動が認められた」
「これらの活動は、イラクへの自衛隊派遣基本計画決定以降、空自先遣隊派遣に伴い、継続的にその活動を活発化させているものと思われる」
このような一覧表の記録が、全国5方面の各情報保全隊から東京の情報保全隊本部に定期的に送られて、2003年11月24日~04年2月29日の、全国各地での監視・情報収集の記録「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」にまとめられたのである。
◆個人も特定する監視・情報収集の不気味さ
この文書では1週間ごとに、全国での自衛隊イラク派遣反対の活動について、「方面、区分、名称・主催団体、行動形態、年月日、時間、場所、動員数、行動の概要」という項目を設けた詳細な一覧表が作成されている。監視・情報収集は全国約41都道府県でおこなわれた。その分布図も添えられている。
監視・情報収集の対象とされた団体は289団体で、記録中に氏名が記されている個人は212人にも及ぶ(『週刊金曜日』編集部「市民と憲法を敵に回した自衛隊」/『週刊金曜日』2007年6月15日号 金曜日)。
「関連写真」として、街頭宣伝、デモ、申し入れ行動を隠し撮りした写真も20枚ほど添付されている。なかには特定の人物の顔を○で囲った写真も含まれている。それぞれの活動の中心人物などを特定してマークするためであろう。監視・情報収集の不気味さが伝わってくる。

2004年1月12日~1月18日の週間一覧表には、計86件の記録が載せられ、総括にあたる「国内勢力の動向に関するコメント・全般」には、こう書かれている。
「1.16(金)、防衛庁における陸自先遣隊の編成完結式、隊員・装備の出国及び17日(土)のクウェート到着という自衛隊イラク派遣における陸上自衛隊の具体的な動きが始まった。派遣自体が本格的に始まった今週は、先週と比べ、総数的に再び急激に増加するとともに、内容的にも、大規模人員を動員した集会・デモ、自衛隊イラク派遣に関連する駐屯地及び基地に対する抗議行動が、中方〔中部方面〕筆頭に各地で行われた」
情報保全隊は全国各地でくまなく、自衛隊イラク派遣に反対する活動に目を光らせていたのである。
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