「自衛隊の情報保全隊の国民・市民に対する監視・情報収集は違法・違憲」と訴える裁判が、2007年に起こされた。「自衛隊の国民監視差止訴訟」である。原告の市民らは、自由にものが言えない社会にさせないために声を上げた。(吉田敏浩/写真はすべて筆者撮影)

◆「自衛隊の国民監視差止訴訟」原告の訴え

それは2007年10月5日、国(政府)を相手取って、情報保全隊の監視活動の差し止めと損害賠償(国家賠償請求、原告1人あたり100万円)を求め、仙台地裁に提訴された(第1陣)。原告は第6陣まで合わせて総勢107人。東北6県在住で、情報保全隊による監視・情報収集の記録に実名が記されたり、監視・情報収集の対象となった団体の集会やデモなどに参加したりした人たちである。
 
「訴状」によると、原告たちは、情報保全隊の監視行為により、人格権、プライバシーの権利、知る権利、言論・表現の自由、集会結社の自由、思想良心の自由、平和的生存権を侵害され、いちじるしい精神的苦痛をこうむったと、次のように訴えた。
 
「わが国では、戦時下において、軍隊内の『憲兵組織』が強大化し思想弾圧など国民生活全体を監視するようになった悪しき歴史を有している。今回の自衛隊の国民監視活動はこのような『憲兵』による国民監視の復活さえ危惧させるものである」

「戦前の特高、憲兵等による言論・思想弾圧を体験した原告らにとっては、『戦争』と『言論・思想弾圧』は表裏の一体関係にあることは肌身に染みて体感してきただけに、なおのこと、その見えざる監視活動や情報収集活動からの恐怖と苦痛は計り知れないものがある」                                 

監視・情報収集の対象とされた原告たちが感じた不安、精神的苦痛、憤りは、「意見陳述書」のなかで、次のように語られている(『権力の闇に憲法の光をあてた9年』自衛隊の国民監視差止訴訟原告団・弁護団、自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会編・発行  2017年)。

仙台市で開かれた「自衛隊の国民監視差止訴訟」の原告・弁護団・支援者などが参加した集会(「自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会」主催)(2008年6月撮影)

「私は実名で監視されていました。巡回宣伝は追跡して監視され、参加人数や街宣内容が記録され、写真も隠し撮りされ、腹立たしさとともに本当に“こわい”と思いました」

「私が、自衛隊の監視の対象になっていると知ったのは、北秋田市のホテルにかかってきた電話からでした。 その日は、核兵器廃絶国民平和大行進の県内行進中でしたが、驚きとともに、今もよみがえる不気味さは忘れられません。ホテルのロビーにいる人や従業員の中に、ひそかに私を監視している人がいるのではないか、と不安で落ち着きませんでした。こうした不安は、突然に、今でも、私を襲い、周りの人間を不信の目で見てしまうことがあります」

「『イラク戦争反対』や『イラク派兵反対』と意思表示する行動や人間が、自衛隊情報保全隊・国の監視対象になっているのは、多様な意見を封じることではないか、と民主主義の危機を感じました。情報保全隊の誰かに監視されているかもしれないということで私が感じた恐怖は、意見表明を萎縮させることにつながります」

このような不安、恐怖、圧迫感は、自衛隊という国家機関による監視の対象とされた当事者でなければわからないものだろう。もしも同じような立場に置かれたら、やはり多くの人は萎縮の念にとらわれ、さらなる「反対」の「意思表示、意見表明」をためらってしまうのではないだろうか。

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