◆国家による監視・情報収集は民主主義の基礎を蝕む
この判決に対して原告側は、自衛隊の情報収集について「高裁も違法性を認めた点は画期的」で勝訴として評価する一方、賠償請求を「1人にしか認めないのは不当」だと批判した。国側の防衛省は「主張が理解されなかった部分があり、厳しい判決だ」との談話を発表した(同前)。
原告側は最高裁に上告したが、国側は上告を断念した。高裁判決の確定を受けて原告側は記者会見で、「自衛隊が違法行為を認めたものであり、国民の基本的人権の擁護につながる重要な成果だ」、「安全保障関連法や特定秘密保護法の成立で、日本が戦争に向かって進んでいく道に防波堤をつくった」と、判決確定を評価した(『河北新報』2016年2月18日朝刊)。

その後、最高裁は2016年10月26日、上告を棄却した。原告団長で仙台市在住の写真家、後藤東陽氏(当時91歳)は、「最高裁は戦争に向かおうとする政府を抑制しなければならない立場なのに、政治に引きずられた判断が出たのは残念だ。法の番人としての役割を捨てたと言わざるを得ない」と批判した(『河北新報』2016年10月29日朝刊)。
自衛隊の情報保全隊のような国家機関の国民・市民に対する監視・情報収集は、個々人の「意思表示、意見表明」を萎縮させ、プライバシー、言論・表現の自由、集会・結社の自由などを侵害する。基本的人権であるこれらの自由は、民主主義社会の基礎にあたる。
その基礎を、 監視・情報収集の活動は確実に蝕む。このような国家による監視・情報収集を許してしまえば、萎縮の空気がひろがって、自由にものが言えない社会になってしまいかねない。(つづく)
吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)、『横田空域』(角川新書)、『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。























