無許可で荷物運び商売をするリヤカーを没収する役人たち。(2008年10月海州市 シム・ウィチョン撮影)

無許可で荷物運び商売をするリヤカーを没収する役人たち。(2008年10月海州市 シム・ウィチョン撮影)

 

拡大する市場に大統制始まる 1  リュウ・ギョンウォン
リムジンガンではこれまで、朝鮮におけるこの十数年来の市場の急拡大と、それが果たした経済活性化の役割、社会に与えた強いインパクトについて度々言及してきた。

また一方で、権力がしばしば市場に干渉し、その拡大の抑制や統制を試みたり、逆に利権を求めて市場の中に入って暗躍していることにも触れてきた。
とにかく、今の朝鮮社会について語るためには、巨大なパワーを持つに至った市場を無視しては意味がないことは確かである。
メキメキと力をつけたこの市場に対して、金正日政権は、今、大々的な再編整理を目論み、動きが急である。

本誌のシム・ウィチョンをはじめとする内部記者は、金正日に「異変が発生」した後の二〇〇八年後半に、精力的に市場について取材した。
朝鮮の権力者による市場への干渉は、経済の原理に基づく合理的な判断とはとても言い難いもので、国際的な経済危機が叫ばれる今、朝鮮経済に大きな混乱をもたらす可能性があると考えられる。
内部記者の取材を基に、朝鮮の市場の最新の動きを報告する。

市場に立ち込めた暗雲
朝鮮では一九九〇年代中期に、経済の新しい時代が訪れた。「配給労働経済」(注1)を運営していた国家権力が、食糧配給制度の秩序維持を完全に放棄するという深刻な状況に陥った。

このため民衆は、自力で生きることを強いられる過酷な「苦難の行軍」へと追いやられた。党と国家は、国民に対し、文字通り《草根木皮(そうこんもくひ)》で命を繋ぎ、一九三〇年代の抗日革命の伝統を継承し、六〇年前の日本の植民地統治下での耐乏方法に倣うよう宣伝した。
当然のことながら、このような党と国家による無理強いを、社会が受け入れられるはずはなく、民衆の間からいわば「九〇年代の市場革命」=一種の「民主的な経済革命」が起こった。

各地域に散らばり孤立していた市場は、活発に結びついて一元化された全国市場を形成し、そればかりか、国境という垣根を乗り越えて、中国との物流網の構築にまで成功したのだった。
市場の拡大はそれだけに止まらず、国営企業の実質的な活動を、市場の中に漸進的に取り込んで行った。
市場は、朝鮮経済の中核に成長し、既存の食糧配給制に代わり、人民を飢餓から救い出す救世主となったのだった。

遂に国家も市場のパワーに追随し、二〇〇三年五月五日には内閣決定第二七号「市場管理運営規定(暫定)」によって、公設市場である〈総合市場〉を新設するにいたった。

国家は、公設市場を新設するにあたり、その一年前の二〇〇二年七月一日に、経済管理改善措置を実施したが、その主な内容のひとつが、破綻した既存の食糧配給制度を修正し、労働者の扶養家族、家庭の主婦を対象にして、国家配給食糧価格を市場価格に見合うよう引き上げ、その代わりとして、女性達の市場での活動を、幅広く容認するというものであった。(注2)
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