「首領とは個人ではなく、国家と人民の領袖である」という社会の了解は、朝鮮人民と軍隊内部に根付いた絶対的な信念、信条である。
その意味においては、金正日は未だ次期後継者の地位に止まっているとも言える。
党の総書記、軍の最高司令官、国防委員長の三大最高権限の地位に就いている金正日であっても、たかだか上層幹部たちの「ボス」に過ぎず、その暮らしの豪華さと銃剣の威光が仰々しいだけで、人民の首領としての風格はどこにもない。

継承すべき最高指導者の地位の本質が、金日成―金正日間と金正日―×××間の二つの継承過程において大きく変質してしまっている。
つまり、「首領を奉る国」において、金正日が継承するはずだったのは、首領の地位と役割であったが、金正日は未だ首領にならずにいる。
すると、金正日の後継者なる者は、いったいどんな地位と役割を継承するというのか、それが明確になっていない。これこそが後継の困難さを現わしている。
(つづく)
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注1 全ての朝鮮の国民は、日々の生活を党によって評価される。また、その代々の家系から普段の素行、思想傾向にいたるまで、調査記録されている。不審点があれば、秘密警察である保衛部によって取り調べを受けることになる。
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注2 朝鮮特有の「思想闘争」方式で、党組織から党員に下される処罰のこと。全ての党員の行動の問題は「思想」にその原因があり、「『思想』は革命的な鍛錬、即ち過酷な環境での労働を通じた肉体的な苦痛の中で優れたものに洗脳されて行く」という統治「理論」に基づいて行われる。革命化の処罰を受けた党員とその家族はいわゆる「革命化管理所」と呼ばれる統制区域へ追放される。
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注3 「深化」とは永遠に続く住民登録再調査事業のこと。金日成は「深化事業をしっかりとして、住民文献を辞書のようにしろ」と指示した。その専門機構として人民保安省(警察機関)が存在する。
九〇年代の一大思想検討方針の追い風を受けたこの機関は、「深化組」を組織し、中央党ならびに権力機関の多数の中央幹部たちを敵対国のスパイにしたて、本人とその家族を処刑、粛清、追放した。
しかし、行き過ぎた「深化」が政局に大混乱を呼び起こしたため、金正日が粛清劇を止めた。
すると数万人に達する「深化組」のメンバーが反対に処罰を受けるようになった。彼らは今なお全国の管理所や教化所に政治犯として収監されている。最近も処罰に関して「深化組」に対する弾圧を強化することという指示が出ているという。
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