前回に続き、ある道の党機関の政治部門で働く労働党幹部、李さん(仮名、50代後半)のインタビューを掲載する。李さんは日ごろから農村をはじめ、道内を巡回しながら党中央からの政治的指導を北朝鮮の人々に「講演」するのが仕事だという。そのため、党の方針(上層部)にも人々の暮らし(現場)にも詳しい。

9月28日、当初の予定に遅れて北朝鮮で44年ぶりの党代表者会が開催された。その結果、金正日の三男、金正恩(キム・ジョンウン)が党中央軍事委員会の副委員長と党中央委員会委員に選出され、金正日総書記の後継者への第一歩を公式に踏み出した。

同時に長らくベールに包まれていたその姿も公開された。
だが、人民にとって何よりも大事なはずの、経済政策をはじめとする「北朝鮮社会の未来」については、党代表者会では何も語られることはなかった。
1週間後に党創建65周年の大型行事を控え、今後大きな動きがあることがが予想される北朝鮮において、アジアプレスが取材したこの労働党幹部の語ったことは、北朝鮮の政治情勢を知る上で非常に示唆に富んでいるといえる。

第4回目の今回は、なぜ北朝鮮の社会が変わらないのか、その原因である保衛部による統制についてまとめた。
聞き手はアジアプレス北朝鮮取材班の朴永民(パク・ヨンミン)記者。インタビューは8月後半に中国で行われた。
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