◇映像をどう見るか

ク記者をはじめ、北朝鮮内部で取材活動を続けるジャーナリストたちが伝えるところによると、北朝鮮では今年に入り軍隊の食糧事情が顕著に悪化し、一部では塩の入手にも困るほどだという。

このため、住民から軍糧米を大々的に徴発していた。一方、食糧配給が途絶えて久しい住民たちの多くは、市場で商売をして現金で食糧を購入することで、最低限の生活をなんとか維持している。このため「北朝鮮の食糧難」と一口に言っても、生活を自力で支えている一般住民と、政府に頼らなくては生きていけない兵士を分けて考える必要がある。ではなぜ、軍隊優先の「先軍政治」を掲げる金正日政権の下で兵士の栄養失調が発生しているのか。二つの大きな理由が挙げられる。

会員映像ロング版(約4分)はこちら: https://youtu.be/0-OxkNITKOE

一つ目は政府が人民軍全体を満足に食べさせられる、十分な食糧を確保できていないという点だ。軍糧米は、協同農場からの割り当て量の納付、軍隊自留地での収穫など国内生産分を基本にしてきた。足りなければ政府の責任で輸入するなり、国内の市場から買って調達すればいいはずであるがそれができていない。

要するに、政府に金がなくて確保できないのである。もう一つは政府が軍上層部による、市場への軍物資の横流しを食い止められていないという点だ。配給という原価ゼロの物資を市場に横流しすることで、軍幹部は大もうけすることができる。

このような個人的な蓄財目的に加え、さらに多くの部隊で必要物資の「自己解決」が求められている現状がある。ガソリンをはじめ、軍の活動を維持するために必要な物資を政府が手当てできず、かなりの部分を「自給自足」するよう命じられているのだ。このため、軍糧米などを横流しして現金を作る必要が出てくるのだ。

今回の衰弱した兵士の一団の姿は、軍をまっとうに維持するできなくなった金正日政権の現状を証明しているものといえる。これは政権の弱体化を何よりも雄弁に物語っている。
[取材=具光鎬(ク・グァンホ) 整理=李鎮洙(リ・ジンス)]

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