◆日米同盟を共に「血を流す」同盟へと変えるのが狙い

黒々と底無しの穴が開く――。自民党・安倍政権の返り咲きからこの方、日本は再び戦争をする国へと化す道に迷い込んでいる。
安倍政権は「集団的自衛権の行使容認」に向けて解釈改憲をごり押ししようとしている。沖縄県名護市の辺野古への新基地建設計画も強引に推し進めている。
自衛隊はオスプレイや水陸両用車や無人偵察機など新兵器の導入も進めている。すでに陸上自衛隊の部隊が米軍のオスプレイに乗り込んだり、オスプレイが海上自衛隊のヘリ空母型護衛艦「ひゅうが」に着艦したりするなど、共同訓練も強化している。

近年とみに進んだ日米軍事一体化、米軍と自衛隊の基地の共同使用、共同訓練・演習の拡大、増加から見て、オスプレイを自衛隊も配備すれば、米軍と相互乗り入れ的に訓練や作戦で共同使用する将来像が予測できる。
それは、2010年の日米両政府の普天間移設に関する共同声明で、辺野古に建設予定の新基地の、米軍と自衛隊による共同使用の検討が合意されていることとも符合する。
つまり、新基地を拠点にキャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、ブルービーチ訓練場、伊江島補助飛行場、北部訓練場を結んで、米軍と自衛隊が実戦的な共同訓練・演習を積み重ね、さらに全国に設定された低空飛行訓練ルートも使って練度を高め、集団的自衛権行使の名のもと、海外の戦場へ共に出撃して戦う日が来ることが、現実味を帯びつつあるのだ。
日本政府は、自衛隊のオスプレイなどの導入も、海兵隊との共同訓練も、尖閣を含む南西諸島の防衛力強化のためだと主張する。
しかし、米国が2000年代に入って、いわゆる「アーミテージ報告」などで日本に集団的自衛権行使の実現を迫ってきたその狙いは、米日同盟を米英同盟のような共に"血を流す"同盟へと変えることだ。
すなわちイラク戦争やアフガニスタン戦争のような、世界各地で起こるアメリカ主導の多国籍軍による武力行使に、日本を参加させることにほかならない。

航空自衛隊と陸上自衛隊はイラク派遣隊員のストレス状況を把握するため、心理テスト方式のアンケート調査を定期的におこなっていた。筆者は情報公開法にもとづいて防衛省に文書開示請求をしたが、A4判61枚の文書はほぼ全面的に黒塗りにされていた。

◆黒塗りにされたイラク派遣自衛隊員のストレス状況調査文書

そして、日本はすでに2001年~10年の自衛隊インド洋派遣と04年~08年のイラク派遣において、アフガニスタンやイラクで戦争をする米軍に補給・輸送の兵站支援をすることで、事実上、集団的自衛権行使の領域に足を踏み入れていた。
航空自衛隊の輸送機はクウェート・イラク間で、武装した米兵など多国籍軍の兵員約2万5000人を空輸した。バグダッドへの空輸では、地上から携帯ミサイルで狙われたことを示す警報が鳴り、機体を急旋回させて回避することがひんぱんにあった。
陸上自衛隊のサマワ宿営地はロケット弾や迫撃砲弾の攻撃をたびたび受けた。移動中の車両が仕掛け爆弾の攻撃を受けたこともある。
このように実質的な戦地に派遣された自衛隊員たちは、過酷なストレスにさらされた。航空自衛隊と陸上自衛隊はイラク派遣隊員のストレス状況を把握し、メンタルヘルス対策を立てるため、心理テスト方式のアンケート調査を定期的におこなっていた。
私はその結果を知るため、情報公開法にもとづいて防衛省に文書開示請求をした。しかし、受け取ったA4判61枚の文書はほぼ全面的に黒塗りにされていた。
その不開示理由は、「隊員のストレス状況が明らかになると、派遣部隊の精神的疲労による戦闘力の低減具合が推察され、自衛隊の任務の効果的な遂行に支障が生じる」からだという。

情報公開法にもとづいて防衛省に文書開示請求、受け取った文書の一部。「トラウマ体験の内容」は全面的に黒塗りにされていた。

◆戦時ストレス・PTSDと戦争をする国への変貌

ごくわずかな開示部分には、「緊張感、不安感、不幸感」「受検者を苦悩させるような新しい事実」「ショックな出来事があった」「隊員のトラウマ体験の影響」「睡眠障害、不安と気分変調、希死念慮うつ傾向」「メンタルヘルス担当要員が派遣されている」などの記述が、黒塗り部分にはさまれて散見される。
調査結果の数値や回答内容、その分析報告がことごとく不開示になっているため、派遣隊員のストレス状況は具体的にはわからない。
しかし、「トラウマ体験」や「希死念慮うつ傾向」といった言葉から、ストレスの深刻さがうかがえる。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えた隊員の存在も推察される。
「自殺者の概要」という項目もあり、07年末の時点で7名の隊員が帰国後、自殺したと記されている。ただ、詳細は黒塗りされているのでわからない。イラク派遣隊員の帰国後の自殺者数はその後も増え、5年後には25人に達している。
海外への事実上の戦地派遣の拡大にともない、自衛隊はメンタルヘルス対策に迫られてきた。仮に集団的自衛権を行使して米軍と共に戦闘をすることにまでなれば、米軍が、そしてアメリカ社会が抱える深刻な兵士の戦時ストレス・PTSD問題を、自衛隊も、日本社会も同じように抱えることになる。
それはまた、戦場とされた国の住民に流血とPTSDなど心の傷を強いることにもつながる。
黒く塗りつぶされ秘密にされた「派遣隊員ストレス状況調査」文書は、戦争をする国に変わりつつある日本の行く手を暗示している。やはり黒々と底無しの穴が開く――。
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