朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は、9月16日付で「党の不敗性の担保は、人民大衆の中に深く根差し、人民大衆と渾然一体になるところにある」という金正日 の「名言解説」を掲載した。住民との結びつきを強化する必要性について長文で説明したものであるが、金正恩政権が、すでに疎遠になった住民との関係を意識 し、宣伝に乗り出したものとみられる。(ベク・チャンリョン)

平安南道平城(ピョンソン)市の市場入り口に座り、食べ物とお金を乞うコチェビの少年。両足首が無い。2013年3月。

平安南道平城(ピョンソン)市の市場入り口に座り、食べ物とお金を乞うコチェビの少年。両足首が無い。2013年3月。

 

この記事は、前半部分で
「人民を信じて人民に依拠すれば天下を得て百勝するが、人民に遠ざけられ捨てられれば百敗するのが革命の真理だ」
と説明した。また
「人民を愛し人民のために服務し、人民との渾然一体を成し遂げたのは...(省略)わが党の真の姿だ」とし、先代たち(金日成、金正日)が、生涯にわたり住民たちの中に入って彼らと苦楽を共にし、党を住民と固く結合した「母の党」として建設したと強調した。

川ベリの整備工事に動員された人々(北朝鮮北部 2013年6月撮影、アジアプレス)

川ベリの整備工事に動員された人々(北朝鮮北部 2013年6月撮影、アジアプレス)

 

さらに記事では現在の指導者金正恩氏の「人民観」を次のように宣伝している。
「人民の利益と便宜を最優先、絶対視していらっしゃる方が、敬愛する元帥様(金正恩)であり、人民の幸せと繁栄のためには、たとえ体が一粒の砂になって後 世の人たちが歩く道路に撒かれても、それ以上に望むことのない、高潔な人生観で心を燃やしながら人民のための滅私服務の道を歩み、また歩んでいらっしゃる 方が、私たちの元帥様である」

これまで金正恩新政権が見せた行動は、若い指導者に対する北朝鮮住民の期待をあきらめさせるに十分だった。血の粛清は継続され、住民たちの生活は日増しに 悪化し、政権に対する住民の信頼度は手の施しようもなく落ちるばかりである。8月末、金正恩政権が「準戦時状態」を宣言した時も、「早く戦争でも起きた方 がいい」というのが地域の民心であると、北朝鮮内部の協力者が伝えてきた。民衆の信頼を失った金正恩政権が、いくら「人民大衆との結びつき」を強調して も、その前途は順調ではないだろう。

◆ 写真報告  金正恩体制下増えたコチェビ
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