基地内に入るまでに1時間半かかった。ここ数年、来場者は岩国市の人口(13万2000人)を大きく上回る(2018年5月撮影・新聞うずみ火)

◆夜間訓練の懸念

突然の爆音。上空を見上げると、戦闘機が空を切り裂くような重低音をまき散らしながら滑空している。F35Bのデモンストレーション飛行だ。市外から訪れる人たちには非日常の空間も、岩国市民にとっては日常。艦載機移転から1か月、4月中に市へ寄せられた騒音苦情件数は過去最高の3700件を超えたという。

「いま懸念しているのが陸上空母離着陸訓練(FCLP)です」と、久米さんは指摘する。

「滑走路を空母の甲板に見立て、艦載機が滑走路に接地し、すぐまた上昇する『タッチアンドゴー』を繰り返す訓練で、いま硫黄島で実施していますが、これまで厚木でも行われました。当然、岩国で行われる可能性があります」

さらにFCLPのあと、パイロットは空母への着艦資格を取得するための訓練(CQ)を義務づけられており、岩国で夜間の離発着が増える可能性が懸念されている。

◆ 多額の国補助金

「米軍基地の拡張に伴い、軍人軍属による事件事故も隣り合わせです」と指摘するのは瀬戸内ネット共同代表の桑原清さん(79)。

 「2010年に愛宕山地区で軍属が運転する車にはねられ、66歳の自治会長が亡くなる事故が起きました。軍属は出勤途中で『公務中』と判断されたので、日米地位協定で日本での裁判権がない。結局、4か月間の運転制限を課せられただけでした」

今年4月には米海兵隊員がフェンスを乗り越えて脱走、2時間半後に警察に身柄を確保される事件が起きている。

岩国基地から朝鮮半島まで300キロと近い。米韓軍事演習にも参加しており、朝鮮半島有事があれば、岩国基地が出撃基地になることは間違いない。

岡村さんは言う。「米朝が一触即発状態になった時、在日米軍基地が北朝鮮の攻撃対象になるという情報があり、市民の不安が高まりました。この基地は北朝鮮のミサイルの射程内にあり、岩国市民を守るものではありません」

基地拡張の見返りは国が市に出す防衛関連の補助金。年間予算630億円の岩国市に17年度だけで104億円が支給されている。

「基地の街に住む人間として反対の声を挙げていかねば」と話す岡村さん。だが、市民の中には「国が決めたことだから」とか、「基地と共存して補助金をもらう方がいい」という声もあり、なかなか大きな声にはなりにくい。(了)