満13歳にして身長110センチだった孤児のソクチョル君。朝鮮族の教会に保護されていた。背後は豆満江を挟んで北朝鮮。2001年1月に撮影石丸次郎。

◆茶髪の難民、太った難民

韓国入りを果たす北朝鮮難民が急増し、仁川空港に到着した様子を映像で見る機会が増えた。韓国入りする難民が、概して身なりが良く、なかにはえらく太った人や、日本人、韓国人と見分けがつかないような先端ファッションに身を包んでいたり、茶髪に染めた若い男性の姿もあった。

自由と食糧を求めて命懸けで北朝鮮を脱出したというイメージの強さから、彼ら彼女らの、健康そうで洗練された姿に納得がいかない人もいたようだ。それは、過去のアフリカ、インドシナ、アフガンの難民映像を思い浮かべ「難民はボロボロ」という先入観が刷り込まれているせいだと思う。

確かに、北朝鮮を脱出してきたばかりのときは、多くの人はみすぼらしい衣服に、痩せ細った体躯、日焼けした顔に警戒心に満ちた落ち着きのない目つき、という外貌が普通だ。だが、食べ物が安く豊富な中国で3ヵ月でも暮らせば、かなり体力は回復するし、6ヵ月、1年と経てば太る人も出てくる。

ずっと取材してきたある難民一家の場合、子供が食べ残したものを捨てるのが惜しくて、母親が「もったいない、もったいない」と残さず食べてしまい、1年後には、その母親は村一番の太っちょ女性になってしまっていた。

中国と北朝鮮では、衣服のスタイルと質にずいぶん差がある。北朝鮮で着ていた服でそのまま中国の街を歩くと、たちまちよそ者だということがばれてしまう。それで、匿う中国朝鮮族も自分の衣服を与える。

延辺地区の地下教会に保護されていた子供の越境者たち。あまり外出させず勉強を教えていた。2001年1月に撮影石丸次郎。

 

若い世代がおしゃれに敏感なのは北朝鮮難民とて同じである。潜伏生活が長くなって、テレビや雑誌などを見るうちに、流行の着こなしをしてみたいと思うのは自然な感情だ。特に中国朝鮮族社会は韓国の影響が強く、朝鮮族の若者はソウルの若者と変わらない髪型、モードで酒落込む。

難民の若者たちは、北朝鮮にいた時の欠乏感の反動からか、物質欲を我慢できないケースがままある。匿っている支援者が生活費として渡した金を、当面は必要ないはずの服や化粧品に使ってしまってあきれられることが少なくない。

99年ごろまでは、北朝鮮から出てきた人は、中国の服を着ていてもすぐに難民だと区別することができたが、最近では中国での潜伏生活のキャリアが長くなって、あか抜けた姿の若者が増え、黙って立っていれば韓国・中国の若者とまったく区別がつかない場合もある。男も女も茶髪にする若者が飛躍的に増えた。

見かけにこだわるのは、おしゃれ心から出発しているとはいえ、中国で目立たぬよう、潜り込めるよう神経を使わざるをえない難民生活の知恵の結果だともいえる。
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