◆演劇にできること 600人の声背負い

柳さんが18歳のときに立ち上げ、昨年この小高で活動を再開した青春五月党は、正確には固定の劇団員を抱える「劇団」ではなく、戯曲ごとに演者を募る「演劇ユニット」である。復活公演第1弾『静物画』(2018年)は福島県立ふたば未来学園高校演劇部の部員たちをメインキャストに起用。第2段『町の形見』(2018年)は南相馬市在住の70代の男女が話者、7人の俳優たちが演者として登場する。今作『ある晴れた日に』は、かけがえのないものを失い、過去と現在の二重の時間を生きる一人の女性の姿を、二つの部屋、二人の男を行き来するという斬新な構図で描いている。ヒロインの長谷川洋子さんは福島県立いわき総合高校演劇部出身だ。

福島県南相馬市小高を拠点に演劇活動を再開した柳美里さんの演劇ユニット・青春五月党。東日本大震災後の人々を描く。

Q:この土地に住む人たちに、演劇はどのような力を持ち、何が出来るのでしょうか。

柳: なんていうんでしょうね、やっぱり600人の方のお話を伺ったというのが大きくて、皆さんすごく、悲しみ、苦しみを抱えていらっしゃるんですね。けれどもなかなかそれを自分の外に持ち出すというのはできない。悲しみってどんどん水かさが増していって、胸をふさいだり、眠れなくなったりするので、なんていうんだろう、悲しみの水路を作るというか、それは演劇にしかできないことだなと思いますね。

Q:今後、この本屋と劇場を拠点にどのような展望を持っていますか?

柳: 町をどうしたいというのはおこがましいので思っていないのですが、一つの求心力というか、遠心力なのかもしれないけど、拠点ができればそこを中心に波紋みたいなものが広がるのではないかと思っています。演劇と本屋という場所から、いろいろ縁がつながったら、例えば映画の上映会。映画館がないので映画を観に行きたいと思ったら仙台に行くしかないので、何か映画の、でもそれにはすべてお金がすごくかかることなので。ちょっといろいろ構想はしています。あそこをもうちょっと直せば、ヨガとか太極拳とか華道とか、いろいろできるかなぁと思ったり。

柳美里さんは来年、東京オリンピック開催の時期、劇作家の平田オリザさんと共催で「浜通り舞台芸術祭」〔「浜通り」は福島県の太平洋沿岸地域を指す〕を開く予定だという。小高からますます広がる大きなうねりに今後も注目したい。(おわり)