◆与党は被害者を出し続けたいのか

今回の大防法改正は2005年6月に兵庫県尼崎市のクボタ旧工場周辺で大気汚染による中皮腫被害が判明した「クボタショック」後の2006年改正以降で「最大の改正」とされる。

改正案ではこれまで改修・解体前にアスベストの調査を誰がどのように実施するのも自由だったが、これを一定の講習を修了した者に限定。調査方法についても省令で網羅的な調査を位置づける見通し。また吹き付けアスベストなどの除去の際、故意に法で定めた飛散・曝露防止対策を講じない業者に対し、指導や改善命令なしに罰則適用を可能とする「直接罰」を導入する。

大防法の抜本改正を求めてきたNGO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」所長で被害者を多数診てきた名取雄司医師は上記を「改善」と認めつつも不十分と断じる。

「除去作業中における(作業場内外の)アスベスト濃度測定を今回の改正でも見送った日本の対応は異例です。飛散の状況を調べもせず、十分な対策が実施できるでしょうか。除去業者の資格制度もありません。これもきわめてまれです。
改修・解体前にアスベストの調査を実施する者の資格規定は一部充実したが、実地訓練は義務づけがなく調査の精度で課題が残ります。アスベストがすべて除去できたかをチェックする完了検査は第三者による実施で客観性を持たせることが重要だが、そもそも検査の義務づけが見送られてしまった。
厳しい対策を定める英国では、規制改正において対策が不十分だった場合、50年後にアスベスト被害が増加すると推計までしています。日本では将来リスクの推計もしていませんが、今回の改正でも英国の規制に遠く及ばない不十分な内容です。このままでは改修・解体によるアスベスト被害が50年後も増え続けかねません」

重要法案かつ“不急”。しかも唯一の提出法案で審議時間は余っている。おまけに修正が必要な内容が無数にあるにもかかわらず、なぜわずか3時間の審議で無理矢理通す必要があるのか。今国会の会期150日のうち衆参の環境委員会で審議は各2日。一般質問含め実働4時間では「与党が環境委をサボっている」といわれても仕方あるまい。

参院環境委の与党筆頭理事、自民党の滝沢求議員の事務所に質問を送ったが期日までに回答はなかった。

与党は50年後もアスベスト被害を出し続ける方針だとでもいうのだろうか。